後からこの家にやって来たというのに、ミッツはとても焼きもち焼きだ。先住である猫達を敬う気持ちなどまるでなく、私達が彼らを構うことに我慢がならない。
エル、などと名前を呼ぶだけでワンワンワン!!!と吠えたて、目の前でエルを抱けばその尻に噛みつこうとする。
そのどうにもならない苛立ち、もどかしさのやり場として、ヤケクソで水を飲むのが謎だ。ミッツなりの気持ちの収め方なのかもしれない。
先日初めての長距離ドライブに連れて行ったミッツだが、暑さのせいか疲れか、その後ご飯を食べなくなってしまった。
お散歩はいつものように行き、ご機嫌もいい。お散歩あとのお楽しみにご飯、というところまでは全くいつも通りだったのだ。お座りしてご飯を待っていたが、いざご飯を出しても見向きもしない。どうしたことか。
体調が悪いようには見受けられなかったので、そのまま放っておいた。お腹が空けば、食べるんじゃないか。
食べなかった。
しばらくして見に行っても、ご飯は減っていない。
「ミッツ!」
犬部屋へ呼び込む。ミッツは喜んでやってくる。構って欲しいのだ。
「ほら、ご飯。」
匂いすら、嗅ぎやしない。無関心であることを強調するように、ご飯を無視しでその場で伏せるミッツ。困り果てて私はその鼻先にご飯のお皿を置いた。
そこへ大五郎がやってきた。
不思議なことに、なぜか大五郎は人が犬部屋に入るとこうしてやってくるのだ。興味があるがひとりでは入れないのか、いや、「かぁちゃんそこは犬部屋だぜ、あぶねえぜ!俺が守るぜ!」だと私は思っている(笑)
大五郎は私の足にスリスリと体をこすりつける。頼もしい私のナイトだ。「大ちゃん、いい子だね。」声を掛ける。と。
突然ミッツがご飯を食べだしたのた。いや、食べるというより、ヤケクソだ。ガツガツと少し食べてはやめ、こちらを見る。
「・・・大ちゃん。」今度はもっと力を込めて呼んでみる。するとそれ対抗するようにご飯をかっこむミッツ。
こいつはいい。
「大ちゃん。」
ガツガツッ。
「だいご。」
ガツガツっ。
「にゃう太。」
ガツガツッ。
うまいことほとんど食べてくれたのだ。これで調子が戻ったのか、この後は普通に食べるようになった。
サンキュー大五郎。
もしかしたらあんたの魔法か?
ナイトで魔法使いの大五郎。ゲームならもっと活躍できそうなんだけど。