エル、88歳、大五郎、72歳。人間の年齢に換算すると、もうしっかり高齢期に入っている。
しかし動物というものはあまり見た目に変化がないので、飼い主としてはなかなか「歳を取った」と認識することができない。エルなどは体つきも小さいのでなおさらだ。
ところが大五郎の運動能力が下がって来たことに、気が付いた。
ご飯を食べる食器棚の上、寝室の寝床にしているタンスの上。ここに乗るのが厳しそうなのである。
高さとしては食器棚の方が低いが、狭いからかまずこちらに乗らなくなった。
乗らないのである。(写真は7年前。)
ご飯をくれ、と催促する。座って待っている。ご飯を置いてやる。ところがウロウロするだけで、飛び乗って来ない。
最初私は理由が分からなかった。
こんなことは初めてだ。先に旅立った姉妹猫はには、こういった衰えは見られなかった。
一番の若造、大五郎である。まさか乗れなくなっているとは思いもしなかった。
ところがこういったことが何度も続き、試しに蓋つきゴミバケツをかましたところ、それを足場にしてやっと飛び乗った。
大五郎は、飛べなくなってきているのだ。
寝室の寝床は、タンスの上だ。食器棚中段の食事処よりももっと高い。が、タンス自体が大きく、つまり敷地が広いので、乗りやすいのかもしれない。今のところまだギリギリ飛んでいる。
それでも飛ぶ前は右往左往し、いよいよ心を決めると何度も足踏みをしてからやっと飛ぶ。ギリギリだ。前足だけ乗って這い上がる時もある。
こんな様子なのでダンボールを持って来て足場にしてみたのだが、高さが悪いのか安定が悪いのか、使う様子がない。
まぁなんだかんだちゃんと飛び乗ってはいるから、つい私も後回しにしてしまっている。
ダンボールの位置なり高さなりを、何とかしなくてはならん。
しかし腰が上がらないのには、訳があった。このダンボール、どうやらエルが上手いこと使っているようなのである。
どうもタンスの上に置いてある大五郎の飯がなくなるのが、早いような気がした。
先日ついにその現場を押さえたのだが、よろしくない。食物アレルギーのあるエルには、大五郎のご飯を食べさせられないのである。
しかしエルの狙いは、大五郎の食べ残したご飯だ。
朝までたっぷり食べられるようにと、私は寝る前にしっかりをご飯を入れておく。大五郎はそれを朝まで何度かに分けて食べているはずだった。
これでは大五郎の食い扶持は減るし、エルはアレルギーを発症するかもしれない。
ダンボールを撤去すれば大五郎のご飯は守られるが、大五郎は自力で飛ばなければならなくなる。大五郎が楽に登れるよう工夫すれば、エルも楽に登れてしまう。
一番いいのはエルのアレルゲンが含まれていないご飯を大五郎が食べてくれることだが、偏食大王のダイゴの、やっと見つけた「食べてくれるカリカリ」であった。
そこで私の思考は止まる。限界だ。
かくして私は大五郎の脚力に甘えてしまうのであった。
あんなに必死で登っているのを見ると不憫ではあるが、現状まだ登れているのだ。
頑張れ、大五郎。
ちなみにエルのアレルギーのアレルゲンは、マグロである。
マグロの入ってないご飯がまた、なかなかないのだ。
そして大五郎には、腎臓に配慮したものを食べさせている。
如何ともしがたい状況である。