近所の大型スーパーへ、自転車で買い物に向かっている時のことだった。
ブレーキをかけようとハンドルを握ると、バツンEE:AE482といって何かが切れたような感触があった。
ブレーキのレバーはブランブランである。前にもあったな、こんなこと。
幸い、大型スーパーの2階に自転車屋さんが入ったところであった。そこで直してもらうことにする。
「う~ん・・・。」
店員さんは何とも悩まし気な表情で、部品の棚と自転車の間を行ったり来たりした。
何度もハンドル部分を握り、ブツブツと独り言を言っている。
やがてこちらを向いて、「これだと他の部分もかなりもう古くなって錆びてるし、全部交換すると結構大変かもしれません。」ついにそう言った。
娘の使っていた自転車だ。相当古いのは確かだ。
「いくらぐらいかかりますか?」と聞くと、「このワイヤーと、ブレーキパッドのここと・・、5千円ぐらい・・・?」と言ってから新品の売り場に私を呼び、「こちらの自転車でしたら一万ぐらいで買えちゃうんですが」と言った。
「でも直せば5千円で済むんですよね?」5千円と1万円では結構違うんではないか?
「はぁ、でも直しても、ライトがつくかどうか分かりません。」ライト??
見てわかると思うが、もうこの自転車にライトはない。なぜか分からんが、ぶー子が取ってしまったのだ。なので、100均で買ったものを取り付けていのだが、取り付け部分が壊れたので、都度手で持っていたのだ(笑)なので、現状では何もついていない状態だ。
それに対して「ライトがつくかどうか」と言うのもおかしな話だが。
「ライトは別につけているので、このままで問題ありません。」
そう言うと今度はペダルを回し、「ここもこんなに錆びているので交換すると・・・。」「今は動いてるんですよね?別に壊れてないんですよね?このままじゃダメですかね?」
なぜこの人は、必要な部分だけ交換するという風にしないのだろう。もうワイヤーとパッドで5千円と、自分で言ったじゃないか。
「そうですね、・・・ダメではないですけど、いい状態ではありません。」
とは言うものの、断定的な物言いではない。どこか自信なさげである。
「とりあえずブレーキが直ればいいです、他のことはあとで考えます。」
と言うと、「このブレーキはここの部分が外れてるだけなので、やってみないとどうなるか・・・。」と言って、ブレーキ部分をいじり始めた。
全く意味も意図も分からん。外れてるだけ??だけ??ならなんでこんなあれこれ回り道してるんだ??
ものの2、3分、その辺をいじくっただけで「とりあえず応急処置という感じですが・・・。」と自転車は返された。
ブレーキは直っていた。
どの部品も交換しなかった。
料金を聞くと、「何も交換しなかったので、結構です。」とのことである。
キツネにでもつままれた気持ちである。
応急処置で十分だ、しかもタダとはハッピーエンドであるが、どうもしっくりこないのはこの一連の流れである。なぜこんなに遠回りしたのだろうか?
タダでは商売にならないから、少しでも多くの部品を、あわよくば新品の自転車を買わせたかったのだろうか。
しかし過去に同じ症状を直してもらってタダだったことなど、一度もない。
あの自信なさげな物腰と言い、そんなに腹黒いようには見えなかったんだが。
まぁタダだったからいいか。
むしろ申し訳ないぐらいである。