貴重な禁酒サタデーの話でも書いておこうと思う。
禁酒生活も10日に入り、私はいよいよ腐っていた。
なにか代償が欲しいとばかり考え、しかしそれも「酒抜き」というだけで本当につまらないものに成り果てるという事がわかり、ますます腐っていくという悪循環であった。
思いついたことは「食べる」、それだけだ。
飲まない分を食べる方に回そう、ということで、新橋のホテルバイキングへと向かった。
ここで思いがけず、「アイスクリームにラム酒のソースがかかっている」という恩恵にあずかった。
ほのかなアルコールに、懐かしい友との再会のような気持ちに。
また、衝撃だったのは、リゾットである。
あんなもの、雑炊か粥かという位置づけだったので、まともに食べたことがなかったのだ。
激ウマであった。風邪引いた暁にはあれを食べたいものである。
デザートまでしっかりキメ、ひと回り重くなった体でウォーキングに。
山手線で日暮里に出て、谷中ぎんざを歩く。
しかし飲めない上に腹いっぱいとなると、かの商店街も短くはかない区間であった。T字路に突き当たって、さてどうしようという事になる。
谷根千というぐらいだ、根と千も歩くことにする。
根も千も歩いたが、それだけである。まだ元気だったので、先に進む。次は上野だ。
やがて上野動物園の裏手に出たので、フェンス越しに動物をタダ見する。
良く見えたのは馬、まぁまぁ見えたのはカピバラの背中、遠くに見えたのはレッサーパンダ。
動物園も、そうそうタダではいいものが見えないように工夫しているようである。
上野駅に出てしまった、さぁどうする。
「まだ歩ける。」
「じゃあアメ横通って秋葉原に出るか。」
アメ横。
何度か行ったが、別に安くもなく、混雑しているだけで面白い場所ではなかった。
とは言えないので、「飲めないでアメ横もねぇ。」と言ってみると、「別に飲めても面白いところじゃねーよ。」と返って来たので驚いた。なんだ、アナタもそう思ってたのね。
・・・ということが分かったが、わざわざ避けて通ることもないので、秋葉原までの通り道としてアメ横を歩く。
「次に来る時にはここでしこたまつまみを買って帰り、家で飲む。」というのが私達の結論だ(笑)
安いものは安い。というか、見ているうちに麻痺してきたのかもしれない。
刺身や魚が大量に並べられ、4千円が千円になっていたりする。
いや、もともと千円の刺身なのかもしれないが、近所で買うよりは安いような気がしてくるのである。
軽く飲めそうな屋台も多く、「ここで軽く酔って買い物をする」という夢を描いて、アメ横を後にした。
秋葉原、スルー。寄るところ、なし。用がなかったのだ。
そうか、秋葉原とは、私達には全く接点のない場所であったか。
強いて言えば私のゲーマーの部分で行くべき場所がありそうだったが、常にひと世代古いゲームをやっている身には、アキバは上流社会であった。
次は~、御茶ノ水~、御茶ノ水~~。
ちょっと疲れて来たんだが、ダンナが俄然元気になり、「少し見て回りたいから。」と言った。
いや、いいですよ、あわよくば私も中古シンセなど見たいですから。
でもね、何でアコギの売り場って、エスカレーターのないお店の2階なんでしょうEE:AEB64
ひと通り見て回ったら、茶飲み休憩。そして再び歩き出す。次は水道橋だ。
後楽園が見えてくる。あぁラクーアでひとっ風呂浴びたら、さぞかし気持ちいいだろうなぁ。
でも飲めないのだ。今ではない。飲めない輩は歩くのみ。
次は飯田橋~。
こちらは意外と近かった。
次は市ヶ谷だ。
ダンナは電車の路線図を見る。
「ここから大江戸線で新宿に出るか。」
ウォーキングは突然終わりを告げた。きりがないのでここまでである。
西新宿で降りて、西武新宿へ向かう。酒の飲めない新宿になど、用はない。
しかしダンナがアコギには用があるというのでPEPEの島村楽器に寄り、ちょうど良いのを見つけたようで「これだ」と言い、言っただけで店を後にした。これじゃないのか??どうした??
さすがに疲れたので、地元東村山までは特急にした。
飲んでいいよと言っているのに、ダンナは頑なに飲まなかった。
禁酒の野郎の嫌らしいところは、周りにまで影響を及ぼすことである。お陰でダンナの飲酒量もこのところ激減している。
酒の飲めない地元駅周辺にも用はないので、スーパーに寄ってから家に帰った。
歩数計を見ると、2万歩を超えていた。
さすがに疲れた。
コタツに入り、トマトジュースを飲む。
2万歩も歩いた休日なのに、トマトジュースか。
バイキングのラム酒を思い出した。