結局私は、無痛治療よりも信頼を選んだ。まぁ普通はそうなるだろう。
ホテルのような新しい病院の予約はキャンセルし、電車を乗り継いで1時間半の元かかりつけに行って来たのだ。
これまでのお話。
最後に行ったのは13年前、初めて行ったのはこのブログを始める前でここに記録はなく、20年以上前と言うことになる。
先に結果を言うと、こっちに行くことにして本当に良かった。
カルテが残っていたし、痛む奥歯に関してはこの先生が治した歯である。
ということで、虫歯の話はさておいて、この奥歯をどうするかということになった。
「難症例だ。」
レントゲンを見て、先生は難しい顔をした。そう、最後に診て貰った時にも、これは特別ややこしいつくりになってるとしか考えられん、と渋い顔をしていた。
「まぁ抜けば簡単なんだけど、まだ抜くのはもったいないし、しかしこれ、やってみても治らんかもしれん・・・。」
簡単にこしたことはないが、歯はできるだけ抜かない方がいいという話を聞いたことがある。そしてなにより、先生がこれを治したそうなのである。これが先生の医者としての性分だとしたら、私はやはりこの先生を選んで良かったと思うだろう。簡単を選ぶ医者よりも、しぶとくこだわる医者の方が腕がいいに決まっている。ゲームと同じだ。そういう意味では私はいいゲーマーだと思う(笑)
かくして、「時間がかかるかもしれない」し「治らないかもしれない」という前提で、治療することになった。そしてもうひとつ。
最初は「もう神経はないんだから痛いはずはない」と言っていたが、それは「まぁちょっとピリピリ、ぐらいはするかもしれないけど」に変わり、しまいには「抜いてブリッジ作るとなると、隣の2本の歯が痛い目に合うよ!」と脅された(笑)まぁつまりちょっとは痛い訳だ。思い出したが、これまでもそうだった。痛みに対しては、話が違うということが何度もあったじゃないか。
まぁ仕方がない、それも込みで、私はこの先生を選ぶ。何しろ同業者が「凄い」と言った人である・・・。
奥の根っこの治療になるので、今おっかぶさってるものを外さなくてはならない。外れてから分かったが、もう私の歯は輪郭ぐらいしか残っていなかったのだった。これでも「抜く」という選択肢があったのか。そっちの方が痛そうである。
しかしやはりこっちも痛かった。
痛くなりそうな時は分かるみたいで、「ちょっと我慢してね」とか「ちょっと痛いかも」と予告が入る。そしてこの「痛いかも」はしばらく続くようで、私の気を逸らすためか先生は饒舌になる。
「このユーカリ液のユーカリってね」、ユーカリ液。なるほど、そんなような味がしていた。爽やかなハーブのような香りで、リラックスか痛みを和らげる効果でもあるのかと思っていた。
「コアラが食べるユーカリなんだよ。そう考えると何だか痛くなくなるような気がしてこないか!?」なんじゃそりゃ。痛くなるような気がする、って言うのとどう根拠が違う!?
先生も必死だ。
曰く0.5ミリの残留物を取り除く作業。痛い痛いと騒ぐ患者。
普通「根っこ」は3本のところ、私のこの歯には4本あるとのこと。
「疲れた?今日はこの辺にしておこうか?」と途中で聞かれたが、恐怖と苦痛を「回数or長さ」の負担から選択しろと言われたら、後者だ。続けてもらった。
そんな中、突然助手である奥様に「本当は抜けばいいのにって思ってるんでしょ!」と言ったので爆笑だ。「わ、私、何も言ってませんよ!!」奥様も爆笑。
先生は、大変な方を選んだんだろう。
それでも治るかは分からない。でも治れば一番いい結果だ。
もちろん治ればいいけど、治らなくてもこの選択に私も後悔はない。
あの新しい病院の若い医師にはなかった選択肢だ。ここに来て良かった。
治療が終わり、受付に行く。
「頑張ったね、順調だよ。4本のうち2本終わった。」
逆に言えば、まだ2本残っているということだ。
「あのー、やっぱりこれぐらい痛いんですよね?!」
「ああ、今度は麻酔使うよ!うん!」先生は言ったが、使わないような気がしてならない。使うよ!うん!て。
この頼れる名医は、そういう人なのである。
次回は1月。
歯の奥は、まだ痛い。