落ち込みというものは、そのまま放置するとますます深みにはまるものである。
家に着く頃には何もする気が出ず、ソファに座ってボーッとしていた。
そのまま寝てしまうのは、落ち込んでいようがいまいが関係ない展開だが。
久しぶりに残業もなく帰って来たのだが、結局今回も無駄にしてしまった。
しかし、寝た事によって元気を取り戻したのであった。
「寝逃げ」、これに尽きる。
起きたって状況は何も変わっていないが、少なくとも気の持ちように変化はあった。
まぁ諦めに近いが。
「ぽ子さん、慌てないで。」
「慌てないで慌てないで。」
「慌てないでいいですからね。」
この頃仕事中に、課長と主任グッティ氏がこのように連呼するようになった。
何か決定打があったのか小さな積み重ねかは分からないが、オッチョコチョイでミスが多い私へ、焦らんでいいから落ち着いてやれ、と言っているのである。
オッチョ。
本当にオッチョコチョイである。
洗顔料で歯を磨いた事もあるし、社内旅行で泊まった先では整髪料を化粧水と間違えて顔に塗った。
昔乗っていた車では、手動で閉める窓で自分の首を自分で挟んだ事もあるし、知り合いだと思って挨拶していた人が、単なる近所のコンビニの店員だった事もある。
挙げたらキリがないが、仕事でもこんな感じなのである。
数字を間違える、やりかけた事を忘れるなんて言うのは日常茶飯事で、時にはオッチョコチョイでは済まされない失敗もあるのだ。
仕事で使っている機械をブッ壊してしまったEE:AE4F5
壊れたのではない。私のこの手で壊したのである。
この機械が壊れると、仕事が完全に止まるという深刻な状態に陥ってしまうシロモノだ。
もう生産していない、最後の生き残り的機械だそうだ。
「ま、マジでシャレになってないっす、マジでシャレになってないっす!!」
今日も「焦らずに」「落ち着いて」と挨拶のように繰り返していたグッティ氏が青ざめた。
青ざめるグッティ氏を見て、私はますます青ざめる。
「・・・前代未聞ですな。」
外れた部品を手にとって、課長が言った。
結局、外れた部品をアロンアルファでくっつけるという、重大な事態に反比例した方法で処置をしたが、応急処置である。
応急処置であり、最終的処置でもある。
これでダメなら、高額な新しい機械に全てリニューアルするしかなさそうなのだ。
課長は「直った」と言ってくれたが、もちろん直ってはいない。
これから毎日、いつ不良が生産されるんじゃないかとヒヤヒヤしながら過ごさなくてはならないのだ。
何が辛いって、自分で責任が取れない事である。
オッチョ・飯島、おっと本名晒しちゃったよ。