人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

当事者と傍観者

本当に、忌々しいことである。

これ以上にないほど無防備な睡眠中に、足がつる。

怒り、絶望、恐普A悲観。これらの感情が一度に襲い掛かりながらも、やるべきことはその対処だけである。

傍から見れば、哀れでしかない。

こんな忌々しい突然の不幸にも、慣れるものだ。

何度も繰り返すうち、対処法も確立できてきた。

「足がつる」とひとことで言っても、それには段階がある。

①予兆。この段階で備えておけば、不幸は防げる。

②つり始め。焦らず、体勢を整えれば回避できる。しかしその体勢を崩すことはできない。

③つった。ハッキリと痛い。このままにしておくと、最悪の段階に入る。痛いのをこらえて体勢を整える。

④最悪。もう整えるべき体勢はなくなっており、どうあがいても痛いだけ。運命を呪いながら、神の怒りが去るのを待つのみ。

ここでいう「体勢を整える」というのは、足の置き方や向きをしかるべき位置に持っていくことである。

つま先を反らせたり膝を立てたりするのがいい。それでもダメなら立ち上がる。

②で回避できればいいが、③まで来るとこの体勢にもっていくのにも非常に辛い。辛いが、やらなければもっと辛い地獄が待っているのだ。

敵の剣が自分の肩に刺さっている。これを引き抜くような感じだ。気合の声も出る。

試行錯誤の甲斐があり、このところ④までくることは全くなくなっていた。

②ぐらいまでは良くあるが、②までは「回避」である。問題ない。

しかし先日、③に入った。

それも、③から④に入ろうというところであった。

夜中に目が覚め、「ウッ、これは何かヤバい」と思った時にはすでに時遅し。

体勢を整えようにも、向こうの方が早かった。ふくらはぎはギューッと収縮していく。

痛みは加速し、私は思わず声を上げた。

「いたたたたたたEE:AEACB

もう足を反らすなんていう程度では太刀打ちできそうもない。立ち上がらなくては。

どちくしょうめ、さっきまで私はスヤスヤと安らかに眠っていたはずである。何の仕打ちだ。まだ眠いというのに。

痛みは④の寸前まで来ていた。

「ア~~~~~~~~EE:AEB30」という悲痛な声と共に、立ち上がる。

ふくらはぎがギュッと反応したのが分かる。どうやら勝ったようだ。

しかし油断は禁物。完全に痛みが去り、ゆっくり動かして異変がないことを確かめてから、やっと布団に戻った。

私が書きたかったのは、自分のことではない。

布団に戻るにあたり、私はその存在を思い出した。エル。

一緒に布団の中で寝ていたはずである。

エルもスヤスヤと安らかに眠っていたところ、突然飼い主が唸り声と共に転げまわり、悲鳴を上げて立ち上がったのだ。

私達は、確固とした信頼関係で結ばれている。

しかしながら種族の違いから、コミュニケーションの方法は限られ、お互いに未知の部分が多い。

一体エルはどんな気持ちで私を見ていたのだろうか。

彼女はベッドから出て、足元から遠く離れたところで姿勢を正して座っていた。

想像するに、エルも恐怖だったはずだ。

しかしさらにそれを俯瞰してみると、何とも滑稽な図である。

この私とエルを動画で撮って外側から観たとしたら、そこに同情はないだろう。私だったら笑う。特にエルのアップと私を交互に撮って欲しい。

これでも最終段階は免れたのだ。

その事に感謝して、私は再びエルと眠りについたのであった。