酒に酔うと、色んな感情が割り増しされるものだ。
楽しいことはより楽しく、腹立たしいことには多くの怒りを感じ、悩めることにはとことん悩み。
幸い第一段階の「楽しさ倍増」の時間が長いので、そうそう精神衛生上にも人間関係上にも悪く作用することはない。
危険なのは、ひとりになった時だ。
解放され切った私の感情は、制限する必要がなくなるのでとめどもなくなることがある。
その晩も私は、しこたま飲んだ。
エルを片手に抱え、最後にリビングを出る。
まだ私は第一段階の「楽しさ倍増期」であった。
酒という覚醒剤で、すっかり元気だ。ネットサーフィンでもしながら、眼鏡かけたまま寝落ちなどと言う贅沢をしてみようか。
寝室に入ると、エルは枕元でまず水を飲む。
目を閉じて、ゆっくりと尻尾を揺らせ、ご機嫌であることが人間の私にも伝わって来る。
「可愛いなぁEE:AE595」
酔っ払い効果で、可愛さも倍増である。私は臆面もなく、そのようなセリフを声に出している。
やがて水を飲み終わったエルは、私の体の上を横切って隣で毛づくろいを始めた。
静かな時間が流れている。幸せも倍増中。
「えーうEE:AE595」
意味もなく、呼んでしまう。
小さくて、タレ目のエルがちらりとこちらを見る。
「可愛いねEE:AE595」エルの体に手が伸びる。
「ずっと一緒にいようね。」
「ずっと一緒にいてね。」
「約束してね。」
ヤバい。
「ずっとだよ。」
新しい感情が、すごい勢いで押し寄せる。
「死なないでね・・・。」
悲しみ、急上昇。
「死んじゃいやだ。」
「私を置いていかないでEE:AEACB」
うわあああ~~ん、と泣き寝入りした夜。
気がついたら朝で、目がガビガビに固まっていた(笑)
我が家の猫は現在4匹、飼うのは4回目になるのか。
諸事情から譲渡したこともあり、最後まで暮らしたのは今のところ実家の親子猫だけである。
小学生の頃から一緒に過ごし、それこそ姉妹のように育ったのだ。
いつかいなくなるなんて、考えられなかった。
頭では分かっていても、全く実感が湧いてこなかったのだ。
なので、死んでしまった時のショックと喪失感はとても大きかった。
だから今は、分かっている。いつかこの子達は死んでしまう。
どんなに可愛がっても、どんなに願っても、必ず死んでしまうのだ。
期限付きの、家族。
と言ったら人間の家族だって期限付きであることには変わりないのだが、この小さな命は、純粋無垢のまま、ただ単純に本能と愛情だけを持ったまま、この世を去っていく。
この家の中の風景と、愛着。
彼らには、それしかないのである。
だから私はそれを、幸せなものにしてあげたいと願う。
そしてそれが、伝わってくれたらいいなと思う。
どれだけ想っているのか。
どれほど失いたくないか。
いつか必ず来るその日まで、いつか失ってしまうこの日々を、大切にしたい。