いよいよポコッペリン、活動開始だ。明日は、次のライブのための初リハになる。
全く歌える気がしないEE:AEB64
頭の中で歌うのと、原曲を聴きながら歌うのと、実際にバンドで歌うのとでは、全く違うのである。このままでは一体どんなことになってしまうのか、皆目見当がつかない。
不安だったので、スタジオで個人練習することにしたのであった。
いずれ詳しく書こうと思っているが、エルは皮膚炎になってしまい、すっかりしょんぼりしているところである。
ぼりしょんの原因は皮膚炎ではなく、舐めさせないようにするために着せている服やカラーのせいである。
動きを制限され、意気消沈している模様。
いつもと様子が違うことが不安なのか、ますます甘えん坊になり、ヒョコヒョコと私達にくっついて回っている。
スタジオに出かけようとリビングのドアを開けると、エルは一目散に2階の寝室を目指した。
このところ私も心配なので、ベッタリと甘やかしていた。普段ならついて行って、しばらくヨチヨチしてあげるところであった。
しかしもう、時間がない。
エルを追わずに玄関でブーツを履いていた。
じゃ、行くか、と腰を上げて振り返ると、エルがこちらに下りて来るところであった。
服を着ているため動きづらいようで、ヒョコヒョコヨタヨタと情けない歩き方である。
服は犬用のもので形が合わないのか、肩の部分がだらしなく下がっている。
それでも必死にヒョコヒョコ追いかけてくるのだ。
エルは昔大きな病気をしたせいか、体が小さい。
そしてまつ毛が下向きなのでタレ目に見え、猫らしい威厳がない。
そんなエルが、精一杯急いでヨタヨタこっちに向かっているのである。犬の服着て。
私がドアを閉めようとした時には、やっと追いついたところであった。それを目の前で拒絶するように閉めたのだ。私はとても胸が痛んだ。
個人練習は、散々であった。まずい、このままではボーカルの役目を果たせない。
ダンナはバンド仲間のところへ出かけて行ったが、私は残って最後の追い込みをすることにした。
帰りの車で、エルのことを思い出す。
途中で買い物して帰ろうかと思っていたのだが、やめにした。
車から降りて、家のドアを開ける。
ブーツを脱ぎながら目の前の階段を見ると、エルが先程と同じ格好で下りて来るところであった。
追い込みは後でいいや。エルを抱いて、2階の寝室に上がる。
スリスリゴロゴロとひと通り甘え倒し、最後には私の胸の上で寝てしまった。
お陰でゲームがはかどったわ(笑)
やっとエルが動いたのは、もう夜も9時になった頃である。
さ、やるとするかの。
タレ目エル。