よし、そろそろ始めるか。
午後6時。ひとビリーやってお風呂に入れば、ちょうどいい時間だろう。
窓は開けたままカーテンを閉め、Tシャツを脱いで準備完了。
おっと、扇風機がこっち向いてなかった。
ッチャッチャッッ、チャチャッ、チャッチャ~EE:AE5BEうわ、ハズレだ、リッキー・マーチンというかアチチというか。
曲はランダムに選ばれるよう設定してあるのだが、これ、テンポ速いんだよねEE:AE5B1
ワンツーワンツー、曲に合わせてステップを踏む。
腰を回す。
腕を上げる。
キック。
パンチ。
どの動きも少しでもカロリー消費になるよう、力を込めて精一杯動く。
反動で「フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4」と腹から息が漏れる。野生動物みたいだ。
構うもんか、誰が見ている訳でもない。動いたもん勝ちの世界なのである。
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4ガサゴソ。
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4ガサゴソ。
こ、この音は。
どうしよう、止まるわけにはいかないのだ。下手するとミッション失敗で終わってしまう。
動きながら軽く振り向くと、やはりエルがトイレの砂を掻いていた。
困ったEE:AE5B1
あそこはエルのEE:AE4F5専用である。やがてEE:AE4F5をひねり出すであろう。
そんな事はエルの勝手だが、エルの場合、それで終わりではないのだ。ご褒美のオヤツをあげなくてはならない。
エルの野グソ癖は未だ治らず、その対策としてまだ「トイレでできたらご褒美」なんてことをやっている。
これは効果があった代わりに、「誰も見てなければ野グソ」という習慣もついてしまった。
それでも「いつなんどきでも野グソ」よりはいい、見てさえいれば、ちゃんとトイレでするのだ。この習慣をなくせばエニタイム野グソに転落だ、そうならぬよう私は、エルのトイレのご褒美には細心の注意を払って来たのである。
エルのトイレも気になるが、ビリーに手を抜くのも嫌だ。
私はビリー8:エル2ほどの割り合いを保ちながら、どうしようどうしようと考えていた。
その時、エルはトイレから誇らしげに飛び出し、風呂場のドアの前でお座りをしてこちらを振り向いた。
あぁ、催促しているよEE:AE5B1あの顔。期待に満ち溢れているじゃないか。
ところでエルには、風呂場でご褒美をあげているのだ。気配が分かると全猫ワラワラ寄ってきて大変なことになってしまうのである。
分けてあげようにも、ご褒美は小袋にほんの5粒ほどしか入っていない。猫は喜んでも、人を馬鹿にしているようなオヤツである。
それでも「小袋に入った食べきりサイズ」は他に見当たらなかったのだ。
エルも相当気に入っているようだし、「もっと食べたい」ぐらいの気持ちが残ったほうが次に繋がるかもしれない。
で、これに落ち着いたのであった。
エルはこっちを見つめている。体脂肪を揺らせながら狂ったように動いている私を。
困った、困った、だいたい一時停止できないとか、どういうことよEE:AE4E5
そんなことはありません。ちゃんと「中断ボタン」がありましたEE:AE5B1
初めてそのボタンを押し、ビリーを待たせる。
本当に可哀想なぐらいに、すぐに食べてしまった。ものの10秒ぐらいか。
哀れエルは、皿と私の顔を交互に見ては、皿の臭いをかいでみたりする。
残念だが、以上だ。なぜかというと、・・・
空になった皿を持って風呂場のドアを開けると、大五郎がきちんとお座りして待ち構えているのである。
家族じゅうにアホ認定されているダイだが、実は好きなものに対する反応と執念はズバ抜けているのだ。
何が彼のセンサーに引っかかるのか、未だ不明だ。
動物ふれあい広場を展開する訳にはいかないので、悪いが大五郎は無視である。
ビリー、再開。
ッチャッチャッッ、チャチャッ、チャッチャ~EE:AE5BE
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4
気になることが他にないとは、こういう時には重要なことである。集中して腹筋に力を込めることができる。
ガサゴソ・・・。
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4
ガサゴソ・・・。
フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4フッEE:AE4F4
ガサゴソ・・・。
なにっ!?
振り向くと、エルはトイレでEE:AE4F5の真っ最中であった。
どういうこと!?
私はビリーも忘れて呆然とそれを見ていた。
エルはトイレを済ませると一度私の足元に来てから、風呂場ドアを押して振り向いた。
な・・・、騙されたEE:AEB2Fさっきの、フェイントEE:AEB2F
ってかどうしよう、この場合のご褒美はEE:AEB2F
さしあたって判定に響くのでビリーを中断し、「ちゃんと」トイレをしたエルを無下にもできないので、もう一度ご褒美をあげた。
食べ終わって風呂場のドアを開けると、しっかりダイも待っていた。
何だったんだろう、今のは・・・。私はアチチに合わせてアッパーカットを繰り返しながら考える。
エルは満足げに顔を洗っている。
エクササイズの判定は「D」であった。