冬に入ってからまた舐めハゲができ、去年の時と同じ状態が続いていた。
何かを要求して激しく鳴く、手に噛みついて引っ張っていく、布団に入りたがる。
ハゲのほうもだんだん酷くなり、ズルむけた部分がかさぶたのようになってきた。
毎年これを繰り返すのだろうか。
原因が分からないので対処のしようがない。
去年も病院に連れては行った。
3軒も回ったがどの治療も功を奏さず、薬漬けにするのがイヤだったので放置していたのだが、自然に終わってしまったのだ。
しかしまた始まったとなると、今後も繰り返される可能性が出てきた訳だ。
皮膚の病気ではないだろうと言うところまでは掴んでいたのだ。
では目先を変えて、精神科のようなところに診てもらうのはどうか。
そこで見つけたのが大学病院の「問題行動科」である。
以前入院して死にそうになった時に、「大学病院なら何とかしてくれるかもしれない」とかかりつけの先生に勧められたことがあった。
これは何だか期待できそうである。
そして予約して2週間。
いいんだか悪いんだか舐めハゲのほうはピークを越えて治まりつつあったが、せっかくだから行く事にした。それが今日である。
事前にFAXで問診票が届いていた。
15枚もあり、非常に細かい質問がたっぷり詰まっていた。
家族構成は。
その人との付き合い方は。
撫でるとどうなるか。喜ぶ・我慢する・嫌がる・攻撃する。
ブラッシングをするととうなるか。
部屋の見取り図にトイレの場所、休む場所・・・・・・。
先生はこれをもとにいくつかの質問をしてきた。
さすが問題行動科。
これまでとは違ったものの見方で、新しい発見があった。
しかしいい発見ばかりではなかったが。
まずハゲの方だが、これは治療の効果が出て初めて原因が特定されるのである。
試す事はいくつかあったが、たとえばアレルギーの検査だとピーク時が理想的との事で、治まりつつあるのならこれはまた繰り返されたらその時にという事になった。
行動的な観点からみると、意外な部分から問題がわかってきた。
先生は問診票から「トイレの失敗が多い」という部分に着目した。
そして赤ちゃんの時に保護して人口哺乳で育てた事と繋げ、「もしかしたら人間への依存が強すぎるのかもしれません。」と言った。
人間への依存が強いと、ちょっとした事で不安になったりしてトイレの失敗をしたり体を必要以上に舐めたりする事があるらしい。
エルがどこへでもついて来る、私達がエルを溺愛してエル中心に生活している、などということが分かってくると、さらにそのセンが濃くなってきた。
例えば遊ぼうと言われればとことん遊ぶ。
出たいと言われれば出す。
入れてと言われれば入れる。
噛まれても蹴られてもエルが飽きるまで耐える。
エル様だったのだ。
しかしそれは私達が望んでやっている事でもあった。
可愛くて可愛くて仕方がなく、喜んで下僕となるのだ。
手の傷は誇りである。
無茶を聞くのが喜びである。
「何でもエルちゃんの思い通りになってしまうと、ちょっとした変化などにも酷く不安になってしまいます。」
いつもなら遊んでくれるのにどうして?
どこに行っちゃったの??というような不安など。
普通は飼い主は猫にとって「同居人」のポジションであるのが、エルには「親」になってしまっていて、その分依存も強いらしい。
たくさん遊んであげるのはいいことだが、エルのペースでなく私達の勝手なペースで遊んであげて欲しい、具体的には、エルに誘われてもすぐには乗らず、例えばテレビのチャンネルを変えたりしてワンクッション置くといい、とアドバイスされた。
「もうちょっと飼い主さんがエルちゃんに対してワガママになって下さい。」
そう言って終った。
また問題があるようだったらいつでも来てくださいという事だ。
つまり、可愛がり過ぎていたのだ。
でも可愛いんだから仕方ないじゃないか(泣)
エルの要求を受け止めないなんて、そんなこと私に出来るだろうか。
今日は一緒にお風呂に連れて行った。
エルは最後まで大人しく湯船のフタの上に座っていた。
しかしこれは私の時だけのようだ。
ダンナは「出たがっているようでかわいそうだ」とすぐに出してしまうし、娘ぶー子は「うるさいから」と言ってやはり出してしまう。
私は出してあげないという事を学習しているのだろうか。
エルはちゃんと相手を見極めているのだ。
そして私達夫婦を「親」もしくは「下僕」と見極めているのかもしれない。
風呂から出るとすぐにリビングに飛び出して行ったが、ダンナの姿が見えないのでドアに向かって大声で繰り返し鳴いていた。
やはりエルのためにも私達は変わらなくてはいけないのだろう。