人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

結婚のチャンス

彼女からのLINEは、数ヶ月ぶりになるか。

「結婚しました!」という言葉に驚いたのは、結婚した事実だけではなかった。その相手が、相手だったからである。

    

スマホゲームから完全に足を洗って、2ヶ月ほどになる。それほど未練もなく、本を読む時間も増え、これはこれで満足していた。

最後まで止められなかった乙女ゲーの「恋と深空」も、断ってみれば茶番だ。なんであんなものにうつつを抜かしていたんだろう。

ところがだ、彼女が結婚した相手は、このゲームのキャラだったのである。私は大きく揺さぶられた。

「どういうこと!?結婚イベント!?」

「イベントっていうか、限定ガチャ。」

・・・・・・・・・・。

「いつまで!?」

「あと1日!!」

あと1日。

私は久しぶりに、ガチャに必要なダイヤの数に頭を巡らせる。全然プレイしていないから、ダイヤの数はいくらもないだろう。しかしイベントならミニゲームで稼げる可能性がある。

私はすぐにゲームを立ち上げた。

立ち上がらんかった。

アップデートの容量が足りないのだ。

 

休日だった。そのまま私は出掛け、夜になり酔っ払って家に帰ると再びゲームを立ち上げた。容量が足りん。何を減らせばいいんだ。

差し当たって、ほとんど使っていないアプリを削除した。それでも足りない。

足を洗ったと言ったくせにまだ残しておいたゲームも、削除した。足りない。

ChatGPTに問う。どうしたらガバッと容量空けられる!?

動画を減らせと。

いやいや、動画はもう極限まで減らしてある。なくしたくないものだけしか残ってないのよ。

しかしチャッピーは言った。「大丈夫、スマホから削除しても、データは消えないから!」

ホントかよ?よく意味が分からないが、私も必死である。

「デバイスの空き容量を増やす」。そのために何が削除されるのかは分からないが、データが消えないなら何でもいい。何でもいいから早く!!

 

どうやらガッツリ空き容量は確保できた。次はゲームのアップデートだ。しばらくやってなかったからか、長い。

 

 

 

 

寝ていた。

限定ガチャも終わっていた。

 

 

 

これで良かったんだ。

危うく私はまた、あの世界に戻ってしまうところだったのだ。

結婚したかった(笑)

しかし私の現実は、揺らいでいない。

いつものように朝が来て、56歳の夫と休日にラーメンを食べる。

夢は夢でしかないのだ。

私は現実を「叶えて」いく。