よー飲んで、よー遊んだ1日であった。
珍しく計画通りに運んだが、そのためには6時半に起きなくてはならないという事がわかった。
さらにそのためには、前日飲んではいけないという事もわかった。
そうすると昨日は、極めて奇跡的に過ごした1日だったという事もわかったのだった。
延期していた娘ぶー子の誕生日パーティーをやったのだ。
家でやりたいとの希望が出ていたので、私は色々考えた。
趣向を凝らし、プログラムを作った。
準備もできたがやはりぽ子である。
全て順調という訳にはいかなかった。
つまみはくじ引きにした。
合計52皿であったが、やはり半分以上残った。
そして始めのうちこそは「次は何だろう?」「やった、当たりだ!!」と言う感じだったが、例えばダンナは「ステーキ」「ケンタのチキン」などが続いて当たり、おそらくいい加減サッパリしたものが食べたくなっただろう。
一方私はサラダ2皿、お菓子2皿と続き、肉を食べる前にお腹が膨らんできた。
そのうち食べたいものも限定されてきて、「ハズレ」に感じる皿が増えてくる。
最終的には「適当に食べたい皿、取ってきて」となった。
そして、実はこの中に、激辛ピザと激辛寿司と激辛しゅうまいを少々混ぜておいた。
ところが最初のくじ引きで、激辛ピザが私のところにきてしまったのだ。
まだ激辛があることは誰にも言っていない。
わかっていたら面白くないのだ。
仕込んだのは私だから、私の目の前のピザに真っ赤な液体がたらしてある事にはすぐに気がついた。
しくった、想定外の事態である。
ふつうの人間なら想定内かもしれないが、ぽ子は焦った。
焦ったがこれはまだ一皿目、手をつけないのは不自然だ。
そ知らぬ顔をして食べた。
辛かったが、ぽ子はタバスコや唐辛子系の辛さには強いのだ。
誰にも気付かれずに食べ終わることができた。
次にはぶー子のところにわさびを大量に入れた寿司が行った。
今度はあえて選んでぶー子のところに入れてやったのだ。
何もしらないぶー子は「洗濯物3枚たたみ」というハズレを立て続けに引いたダンナを笑っていたが、アンタだってハズレなんだよ、と思うとおかしくて仕方がない。
早く食え、早く食え、と心の中で煽っていたが、ふと自分の皿を見てぶったまげた。
気をつけていたはずだが、酔っ払って自分の寿司の皿にも激辛寿司を入れてしまっていたのだ。
しくった、心の中でぶー子を笑っていた自分も実はハズレである。
しかもこの非常事態にだれも気付いていない。
みんな楽しそうに笑っているが、その裏の世界を知っているのは私だけである。
アホか・・・。
我慢できずにひとりで爆笑してしまった。
途端にまわりは凍りついたように静かになってしまった。
「なに?」
「大丈夫か?」
聞かないで下さい、どうせもうすぐわかります。
しかし、わからなかったのだ。
ぶー子は大量のワサビの乗った寿司をパクッと一口で、涼しい顔をして食べてしまった。
ええっ!?辛くないのか??
私も続いてワサビ寿司を食べたが、う~~ん、確かにこれなら食べられなくはない。
しかし気付かないとはあり得ない。
「知らない」という事はここまで麻痺させるのだろうか。
最後の激辛はしゅうまいだったが、結局誰もこの皿を当てなかった。
なのでレンジに入れたまま忘れていた。
クイズや古今東西やジェスチャーゲームなど、子供のお楽しみ会のような事をして時間は過ぎていった。
最後のゲーム「ガチャろく」は、人生ゲームのような盤ゲームのテレビゲーム版である。
長い間欲しかったものだが、中古でもなかなか値段が落ちなくて、そのうち忘れていたものだった。
それをダンナが買ってきた。
体験版以来、初めてやる事になる。
もうぽ子はしこたま飲んで、ベロンベロンであった。
コマになるキャラクターは、「酔っ払い」という顔を真っ赤にしたサラリーマンである。
そして、何度言われてもゲームのルールが飲み込めず、あっという間に足を引っ張るビリになり、あっという間に寝ていた。
気がついたらダンナは隣の和室で寝ていて、ぶー子が一人でまだ「ガチャろく」をやっていた。
まだまだ眠かったのでベッドで寝ることにしたが、次に起きたらダンナはまた飲んでいた。
「おっ、うまそうだ。」彼はレンジの中のシューマイを見てそう言った。
「残っても仕方ないから、良かったら食べて。」
中にはからしのタップリ入ったシューマイが2個混じっている。
あぁ、ツーンとなってるダンナも見たいが、ぽ子はまだまだまだまだ眠い。
なので激辛シューマイと一緒にダンナを置いて引き続き寝たが、涙を流してヒーヒー言ってるダンナの顔を誰も見れないのが残念だ。
こんなに寝たにも関わらず、今日起きたのは昼である。
まだまだ眠かったが、近所のラーメン屋が半額だというので行くことにした。
はっ、そう言えば。
「昨日のシューマイ、どうだった??」
「ん?うまかったよ?」
??
「本当に??」
「ウン。」
「何かその・・・、おかしいトコとかなかった??」
「??」
「・・・。」
「ああ、そう言えば・・・、ちょっと辛いのがあったかな??」
その程度である。
つまり、からしもワサビもタバスコも、恐らく古くなっていて辛さが飛んでしまっていたのだろう。
昨日のつまみがたくさん残っているので、今日も飲むことにした。
ダンナもぶー子もガチャろくをやっている。昨日と変わりない風景だ。
受験生と酒飲みの日曜日であった。