やっちまった、寝たときの記憶がない、もう飲めない、今夜は飲めない、勘弁してつかぁさい。
なので、起きるなり腹が減っていた。
ぽ子は二日酔いだとやたらと腹が減るのである。
アルコールを分解するためにフル稼働させられた器官が、エネルギー分を欲しているのではないかと考える。
で、そんな時に食べたいのはラーメンであり、家で食べるならサッポロ一番みそラーメンぽ子スペシャルである。
昨日も食べたな。
かくして朝からラーメンである。
「は??朝からラーメン!?」娘ぶー子が驚いていたが、食べたいのではない、体が欲しているのだ。
言い換えれば私の意思ではない。
体の意思である。
今日は「卵&キムチ&豆板醤入り」で、正真正銘のぽ子スペシャルだ。
キムチが年齢不詳で不安だったが、時間はまだ早い。
腹よ、壊れるなら壊れるが良い。午前中にケリをつける自信はある。
だてに長年、賞味期限の切れたものを食べてきたのではない。なめんな。
そもそもキムチなどという辛い漬物なら、大幅に賞味期限を過ぎても大丈夫だろう。
むしろしっかり漬かってぽ子好みに仕上がっているはずだ。
しかし実際には、「深漬かり」を通り越して水っぽくなっていた。
ヤバそうな味だったが、みそラーメンには辛味が合うのだ。
キムチではなく香辛料だと思って食べる。
卵は予め白身だけすすっておく。
ほんのりとみそスープの味のする白身も、悪くない。
ズルリンと飲み込むその時、一瞬自分が妖怪にでもなった気がしないでもないが。
残った黄身にプツンと小さく穴を開け、そこから流れ出す黄身を麺に絡めて食す。
極力スープに流れ出させないように食べるのがポイントで、これが結構難しい。
ダンナなどはそれがもったいないと言って、黄身は一口で麺と一緒に食べることがある。
確かにそれだと確実だが、ギャンブル性にかけて面白くない。
ダンナA型、ぽ子AB型である。
食べ終わったら丼を流しに置く。
置くだけで洗いはしない。
二日酔いなのだ。ラーメン食べただけでも偉いと思って欲しい。
そこへエルがチョロチョロとついて来た。
この頃エルは良く食べる。
キッチンに来るという事は「お腹すいた」という事だ。
ちびエルは一度にたくさん食べられないので、何度かに分けて食べさせている。
というか、皿にご飯が残っている限り、いつでも食べられるという事だ。
しかしその時には皿は空であった。
かわいそうだが、次の回までおあずけである。
別に食べさせてもいいのだが、乾燥ご飯を皿に入れるカラカラという音がすると、肥満猫ラがもれなくおびき寄せられてしまうのだ。
かわいそうなエル。私は抱き上げた。
慰めるつもりなのだが、実はエルは抱っこが嫌いだ。
さっそくのけぞって、蹴り飛ばす体制に入る。
そうはさせるか、愛しのおちびちゃん。
私はエルが「抱かれていること」に気付かないように、「よっとっと」と言いながら縦にゆすって歩き回った。
しかし、これで気付かないなんて事はない。
呆気なく蹴散らかされ、プライドも愛情もズタズタである。
二日酔いなので、ピアノギターは中止だ。
今週に入ってから、一度も弾いていない。
酒を飲むということは、こういう事でもあるのだ。
翌日の無気力も抱き合わせなのである。
しかしゲームはやる。
何と言ってもドラクエは、ソファにふんぞり返りながらできるのがいい。
これまでやっていたゲームはアクション要素が大きく、デレデレとはできなかったのだ。
いつ何時、壁が崩れるか敵が現れるか。
走る、よける、忍び足。
それに引きかえ、ドラクエは二日酔いでもできるゲームである。
そういえばダンナもついにドラクエを再開した。
1年近く放置していたのではと思うが、昨日は久しぶりにダンナがドラクエをやっている姿を見た。
我が家ではゲームは家庭平和のバロメーターである。
ただボーッとテレビを見ているダンナが心配だったが、これでゲーム漬けになってくれればぽ子も安心だ。
ソファにダラ~ッとふんぞり返りのんびりゲームをやっていたら、猛烈に眠くなってきた。
コントローラーを握った手に力が入らなくなってくる。
しかしセーブポイントの教会まで行かなくては、止めるに止められない。
ぽ子は目をつぶって、主人公ぽこっちを走らせた。
ぽこっちはあちこちにぶつかりながら、時間をかけて教会にたどりつく。
まどろみながら思い出したが、金曜日は空き缶と空き瓶の回収日であった。
どういう訳か金曜は寝不足や二日酔いが多く、逃してしまう事が多い。
そういえば水曜も二日酔いで、ペットボトルの回収を逃してしまった。
外のゴミ箱がパンパンになっていることだろう。
回収車の「左へ曲がります」のアナウンスが遠く聞こえる。
さらば、また来週、である。
今日はもう飲まない。