人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

その怒りに触れる

家で、映画を観ていた。

プロジェクターを設置した音楽室でハンバーガーを食べながら見るのが、いつものパターンだ。エルは必ずやってきて、ハンバーガーをちょっぴり分けてもらうのを楽しみにしている。

 

映画も終盤にさしかかる頃。

ハンバーガーはとうに食べ終え、スナック菓子に移行してアボヅラになっている頃だ。

このあたりにくれば、映画が私達を楽しませてくれているのかはもう分かってきている。私は少々退屈で、眠くなってきたところだった。

 

「ギャオー!!」

エルが突然叫び声を上げた。見ると、鍵尻尾の関節が、譜面台の足に絡まってパニックを起こしている。

エルの尻尾には関節が5個もあり、その全てが鋭角に曲がってひとつの丸い尻尾となっていた。なのでこのように引っかけると、なかなか抜けないのである。そしてこの尻尾はとても敏感なようで、ちょっと触れるだけで物凄くエルは怒る。そんなものが譜面台の足に引っかかっているのだ。怒り狂っている。

とっさに譜面台を外そうと手を伸ばすと、フーッ!!とエルは威嚇して私の手に襲い掛かった。そしてその爪が腕に引っかかり、取れなくなる。痛い、泣きたい。

空いている左手で譜面台を動かそうとするも、譜面台が動くことで尻尾が刺激され、ますます発狂エルの爪が私の腕に食い込んでいく。エルの唸り声と私の叫びが繰り返される。痛い助けてどうにかして~~~!

ダンナが譜面台を外しにかかる。動くたびに、エルはギャオ!!と叫び、私の腕をひっかき、噛みつこうとする。「ちょっとどうしたらこれ取れるの・・・。」複雑に絡んだ尻尾がどうにも取れないようで、ダンナがうろたえている。悪いがこっちも必死だ。エルの怒りは受け止めるから、何とか外してちょうだい。

しばらくは私もパニック状態だったが、なかなか取れないので私も少し冷静になってきた。

とにかく痛い。そして、譜面台を外そうとするとなお痛い目に合う。どうやっても痛いのだ。この痛みからは逃れられないのだ。そう気づいた時、悟りが開かれた。

痛みを関知しない。

これは私の痛みではない。痛いような気もするが、腕が勝手にやってる茶番なのだ。

すると不思議と、痛みは遠のいていく。正確には痛いことに変わりはないが、他人ごとのように感じることができたのである。

よし、どうにでもなれ。その譜面台、私が反対の手で取ってみせる。

 

・・・と意気込んだところで、譜面台は外れた。

しかし今度はエルの爪が私から外れない(笑)爪は海賊フックの義手のように丸くなっているので、食い込んでしまったら回して外さないと取れないのである。

エルはまだガルガルと唸っている。猛り狂う神をこれ以上刺激しないよう、そっとその手を握り、私の腕から外す。

 

フー。

久し振りのエルパニックであった。

終わってから思い出したが、こういう時エルは噛みついてくるので、前回はその辺のものを(ポケット野鳥図鑑だ笑)噛ませておいたのだった。

そうしょっちゅうあってもらっては困るが、時々やらないと忘れるね。

まぁ誰も大事に至らず良かったです、はい。