娘ぶー子ももうハタチになったが、ひどい反抗期もなく、比較的平穏に暮らしてこられた方だと思う。
もちろん今後何があるかは分からないが。
そんな私に、予想だにしない事が起こったのだ。
敵はぶー子ではなかった。
ヨヨヨ・・・。
迷ったが、洗濯する事にしたのだ。
一応まだ梅雨は明けてないし、やれる時にやるにこした事はない。
ご近所さんに遅れて洗濯物を干したのは、辛うじて午前中、10時半頃であった。
まだまだッ!とねばってエアコンはつけていない時間帯である。
窓は全開で網戸にし、リビングのドアも最近取り付けた網戸にして、風が通るようにしていたのだ。
そして干し終わって2階から降りていくと、ギャギャギャと猫のわめき声がリビングの奥の方から聞こえてきたのである。
猫達は、遊びだかケンカだか良く分からないが(本人達も分かってないんじゃないかと思うこともある)、よく絡まったり追い掛け回したり回されたりしている。
1日に何べんも、それこそ3度の食事より多くこんがらがってると言ってもいい。
日常の風景で気にもならないが、弱い方は力の足りない分を声で補おうとするのか、ギャーギャー鳴くのである。
これも日常、気にはならない。
しかし今回のギャーは、どうも尋常ではない様子がにじみ出ていたのである。
誰が鳴いているのかすら分からない程取り乱したギャーの方に向かって行くと、鳴いているのはエルであった。
相手は誰かと思ったら、尻尾に紙袋の取っ手が絡まってパニックになっていた。
ギャーとかフシューとか言いながらひっくり返り、暴れている。
大変だ、早く取ってやらないと。
しかし「早く取る」ってEE:AEB64
暴れているので取っ手を掴めば尻尾も引っ張られ、ますます怒り狂うエル。
こよりのように細く巻かれた取っ手は幾重にもねじられ、尻尾を圧迫していた。
紙袋の中身は、ダンナがギターの先生から借りた「ロック映像年鑑'65」から「'79」のビデオテープと、シングルの羽毛布団なら約1枚をすっきり収納のふとん・羽毛布団収納袋が3つ、つまりシングルの羽毛布団なら3枚分の収納袋が入っていた。
そもそもそれは、早く先生に返すようにと私が紙袋に入れておいたのだが、そのまま放置されているばかりか、なぜかシングルの羽毛布団なら約1枚をすっきり収納のふとん・羽毛布団収納袋が追加されて、さらに時を重ねていたのだ。
まさかこんな事になるとは思わなかった。
猫の尻尾が紙袋の取っ手に引っかかってパニックなんてEE:AEB64
そうだった、エルの尻尾は北斗七星を潰したようにあちこち折れ曲がって丸まっており、時々関節に物をひっかけるのであった。
この複雑鍵尻尾と関係あるのかどうかは分からないが、エルは尻尾に触られることをもの凄く嫌がるのだ。
関節を伸ばすとどうなるのか、などと手を伸ばすような愚かな事は、もう誰もしなくなった。
そこは触れてはいけないエルの大切な北斗七星なのである。
我が家では誰もが知っていることだ。
ところが紙袋はバカである。
触るどころか、引っ掛けてねじって締めているのである。
ところでエルも少々お馬鹿さんで冷静さに欠けるところがあり、しょっちゅうパニックを起こしているが、このように原因が明らかであり、人の手が必要な場合は人が速やかにその原因を取り除かなくてはならないのだ。
この場合、その役目は私だ。
鳴かれ、引っかかれ、噛みつかれ、やっとそれが取れた時にはもうこっちは血だらけであった。
私はエルのためにやったのである。
痛いけど我慢して取ったのである。
それなのにこんな目にあって、あああ。
今度は私が取り乱して吠えた。
血だらけの手を水で流しながら、アホのようにしばらく「あああー」と吠えていた。
家庭内暴力って、こういうものなのだろうか。
ちょっと違う気もするが、重なってる部分もあるような気持ちだ。
まさかぶー子ではなく、エルにこんな気持ちにさせられるとは思わなかった。
不覚にも泣けた。
どうしてママにこんなことするの!!
「あああー、あ?」
しかし、ふと足元を見ると、エルがくっついてお座りしていた。
ううっ、もうダメ、さっきの事は水に流そうねエルちゃん。
尻尾、痛かったね。
ロック映像年鑑、取れて良かったね。
親馬鹿である。
こんな親なら、またやられるかもしれない(笑)