人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

北斗七星にアホ毛

夜になる。

エルは待っている。

この頃エルと姉さん猫たちとの仲はすこぶる悪く、エルはとにかく寝室に逃げ込んでしまいたいのである。

ダンナは嘆く。

何とか自分の寝室に誘い込もうとする。

とりあえずエルは先に開いたほうのドアに走って行くが、残念ながらダンナの寝室からはすぐに戻ってしまうので、結局私の方に来る。

気の毒ですがね。

昨日もエルは、リビングを出るドアを開けるとそれっ、とばかりに突進して来た。

一瞬前までパソコンの上でグッスリ寝ていたので昨夜はダンナに譲ろうと思ったのだが、ドアを開ける気配で猛突進してきたのである。

気の毒ですがね。こうなっちゃどうしようもないですって。

寝室に入るとエルはまず、タンスの上に乗ってそこから窓辺に出た。

水色のブラインドはエルの出入りによって羽が折れ、左側にちょうど良い出入り口ができていた。

そこへバカでかい大五郎も強引に出入りしたために、左下は崩壊しかかっている。

出入り口が広がって猫達は助かったろうが、見た目が悪いので早く取り替えようと思っていたところであった。

ベッドに座って着替えようと思ったその時、ギャオ!というエルの絶叫が響き渡った。

見るとエルの北斗七星が(尻尾の事である。そのように酷く曲がりくねっているのだ。)ブラインドの紐に引っかかってパニックを起こしている。

崩壊しかかって緩んでいた紐が、尻尾に絡まっているのである。

このような事は過去に何度かあった。

エルの北斗七星は非常に敏感なようで、触るだけでギャーと言って激怒する程なのだが、そこに物が絡まるのである、どれ程エルが怒り狂ったか、想像して欲しい。

叫ぶだけではなく暴れるので、手がつけられない。

しかし、こうなったら人の手で外してやらないと解決しないので、ここに斬り込んでいくのであるEE:AEB64

過去にダンナが2度、私が2度、娘ぶー子が1度、流血して何とか解決させてきた。

どう見ても勝手に取れる状況ではないので、覚悟を決めて尻尾に手を伸ばしたが、じっとしていないので紐がどうなっているのかすら分からない。

それどころか怒り狂ったエルはその辺の物に手当たりしだい噛み付いて食いちぎり、蹴り上げてひっくり返っている。

困った・・・。

紐がどう絡まっているのかさえ分かれば、一瞬の痛みを我慢してそれを取るのだが、これでは手も足も出ない。

エルはギャオギャオと絶叫しながら暴れ、こっちも気が気じゃない。

「ぶー子ォォォォ、はさみッEE:AE4E5

私はリビングに向かって叫んだが、この状態ではさみをどうするのだよ、もしかして呼んだのははさみじゃなくてぶー子か。

ただならぬ気配を感じたのか、ぶー子はキッチンバサミを持って駆け上がってきた。

そしてエルを見てすぐに手を伸ばしたが、やはりどうにもならない。

しかしそこで気が付いた。

エルはとりあえずその辺の物に噛み付くのだ。私は「ポケット野鳥図鑑」をエルに噛ませてみた。

その隙にぶー子がブラインドの羽を切った。

言ってくれるな、ぶー子の方が冷静で役に立つのであるEE:AE4E6

しかし羽は切れたが、紐は尻尾に絡まったままである。

とりあえず出血したところを洗って来たが、戻ってみるともうエルは落ち着いて普通に歩いていた。

しかし折れ曲がってポンポンのように丸く見える尻尾から、ヒモが数本アホ毛のように飛び出している。

「尻尾からなんか出てますねぇ。」

「尻尾からなんか生えてますねぇ。」

何事もなかったようにヘコヘコ歩いてはいるが(エルはヘコヘコ歩くのである、赤ベコのように)、ちょっとでも尻尾に触ると先ほどの悪夢を思い出すのかひっくり返って怒り出す。

まぁとりあえずブラインドからは取れたから、もうこのままでもいいかとも思ったのだが、きつく絡まっていた場合、うっ血してしまうかもしれない。

まさか一晩で尻尾がもげる事はなかろうが、「うっ血」という言葉が何とも恐ろしい響きだ。「うっ」とか。

2ラウンド目の始まりである。

バスタオルを腕に巻きつけ、まるで警察犬の訓練のようにエルに噛み付かせる。

その隙に尻尾を探るのだが、じっとしてないので取れやしない。

もう姫は相当ご立腹の様子で、根負けしそうな時に、ぶー子がスルッと取ってしまった。

「なんで?」という程簡単に取れたのが不思議だが、結果オーライだ。その紐がどのようにして取れたかなどこの際どうでも良い。

本当に良かった。

このまま矢ガモみたいに、紐込みでエルという子になってしまうのかと本気で心配した。

今回のパニックが時間的に一番長かったが、人がいる間で助かった。

これ以上長かったら、私がパニックになっていただろう。

もうなっていたのか??

痛いのを我慢する精神力はあると思っているが、物事を解決できる頭脳と冷静さがない。

結局私はポケット野鳥図鑑を噛み付かせただけだったが、今後が本当に不安である。