人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

2年。

犬のミツコがうちに来て、丸2年が経った。

初めての犬との暮らしで最初はおっかなびっくりだったものも、今ではすっかり慣れて、何なら噛まれる覚悟で躾けることもできるようになった。

 

うちに来たきっかけは、「保護」に近かった。

いわゆるネグレクトで飼われていたミッツを、引き取ったのだ。

そんな環境で育った犬を私達が育てられるのか不安が大きかったが、思いのほか手がかからなかったので肩透かしである。

まぁそれもそのはずと言ってもいい。

別にミッツはいじめられていた訳でもなく、迫害されていた訳でもなかった。

蓋を開けてみれば単なる「昭和飼い」だったのだ。

外で飼い、人間と同じものを食べさせ、予防接種の類はしない。

散歩にも行かなかったが、外に繋がれていたのだ、まぁ一日庭を散歩できるというか。

もちろん今ではこんな飼い方は良くないと言われる。

しかし重要なのは、これでも飼い主であるママさんは、ママさんなりにミッツを可愛がっていたこと。ママさんは、他の飼い方を知らなかっただけなのだ。

ただ、説明しても通じないとのことで、こちらで飼うことになった運びである。

細かく書けば、明らかに良くない部分も多々あった。

しかしミッツ自身はそんなに不幸ではなかったんじゃないか。そんな風に思うことがある。

そんな飼い方しか知らなかったママさんと、そんな飼われ方しか知らなかったミッツ。

裸足で野原を駆け回って育っていた子を、都会の暮らしに閉じ込めたようなものだったのか。

 

今ミッツは、人がいる間はリビングに猫と一緒に放っている。

寝てばかりだ。猫と大して変わらない。

それでも犬部屋に繋いでおくと不満そうにこちらを見て、いつも人のいるところへとやって来るのだ。人がソファに座れば、その隣に座る。

「ミッツ。」

声を掛ける。じっとこちらを見るミッツ。

「可愛いね。」

「おりこうさんだね。」

何度声を掛けただろうか。

犬は、愛を受けたい動物だと、私は思う。

猫を構うと焼きもちを焼いて、凄い勢いで割り込んでくるのだ。

ピョンピョンと飛びついて、まとわりつくミッツ。ミッツもまた、惜しげない愛を振りまく。

犬は、愛情深い動物だと、私は思うのだ。

愛情を受け、振りまき、そんなことに喜びを感じる動物。

あのまま庭に繋がれていたら、どれだけの愛情が素通りしただろうか。

 

ママさんはママさんなりの飼い方をした。ママさんもまた、裸足で育った世代だ。責められるものではない。

ただもう、ミッツはあの世界に戻れないだろう。最後まで、一緒に暮らすつもりだ。

とんでもないものを背負いこんでしまったと思う反面、ミッツの笑顔を見て、これで良かったんだとも思う。

まぁ猫よりも大変だけど、もう充分ミッツからは貰っているから。