二者は見つめ合っていた。
犬は繋がれたまま、和室で寝そべっている。
猫は、和室に続くリビングでお座りをしている。
その距離、1メートルといったところか。彼らにしては、近い。
ミッツが吠えないのは珍しい。面倒なのか時々、諦めたようにこうして見ていることもあるのだ。
寝っ転がったまま、下の方からエルを見上げる形だ。
一方エルも、落ち着いている。もっともどうやら我が家においては、犬よりも猫の方が余裕があるように見える。吠えられて驚いているだけだ。時々こうして「犬」の様子を見ている。
静かだった。
最初のうちは、またミッツが威嚇でもしたらいかんと私もそちらに気を配っていたが、どうやら平和である。私はそのうち2匹のことは忘れてしまった。
すると突然クエッ、ケポッという音がしたのだ。エルが吐いたのである。サウンド的にこれは「本ゲロ」ではなく、「プチゲロ」だ。見るとエルの前には直径3センチほどの小さなゲロ溜まりがあった。
猫とは、良く吐く動物である。それもこのように突然に吐いたりする。
面面倒だったので後で片付けよう。私は動かなかった。
エルも動かなかった。
ミッツも動かなかった。
エルがゲロを吐いたが、誰も動かなかった。
二匹は相変わらず見つめあっている。
静かな昼下がりであった。