人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ノルマに貢献した

ダンナが休みを取っていたので、一日買い物に充てる。

オフハウス、100均、元バンド仲間のお店、オフハウスその2、ドンキ、島忠、ドラッグストア。

思ったよりも時間がかかってしまい、島忠とドラストは諦める。元バンド仲間の肉屋さんで買ったちょっといいお肉があるのだ。早く帰って飲みたい。

ドンキでの買い物を終えて、駐車場から車を出そうとしたその時。

「ちょっといいですか?巡回パトロールしてるんですけど・・・、」

二人連れの警察官が寄って来た。

「危険物とか車に入っていないですかね~?」

ダンナの側に一人が、そしてもう一人が私の側へ。窓を開ける私とダンナ。

ない、と言うと、一応ちょっと中を見させてもらえませんかと言う。

まぁやましいものはない。どうぞ、ドアを開けると、二人は懐中電灯を手に車のポケットやらまさぐり始めた。するとすぐに「これ、何ですか。何もないって言ってましたよね。」とコンソールボックスから十徳を取り出した。彼はそこからナイフの部分を出していた。

「あ。」

そんなもの入ってたか。入れっぱなしで忘れていた。

「あぁ、もう入れっぱなしで忘れてました。」

するとこれは何に使うためのものか、最後に使ったのはいつか、どうしてここに入っているのか、いつからここに入っているのか、どうして覚えてないのか、としつこくしつこくしつこく聞き、今度は後部座席の荷物を時間をかけて全て探った。

それが終わるとダンナの免許証を持って電話をしに行き、残ったひとりは、やれこれは凶器になるだの銃刀法違反じゃなくても軽犯罪法に引っかかるだのと言う。

「本署からの指示待ち」とやらで長い間待たされ、「最悪これは署に持ち帰らせてもらう」とのことだ。

 

私は、他人に対して負の感情をあらわにはしないようにしているつもりだ。ことに怒りの感情をぶつけるのは、恥ずかしいことだと思っている。

しかしもう、ブチギレ寸前だ。なに?この容疑者みたいな扱いは。

警察官は、物腰は柔らかく決して威圧的ではなかったが、やってることが失礼極まりないではないか。

警察官の服を着たどこの誰とも分からない男に、荷物という荷物、車の収納と言う収納を全て露わにされるのだ。

それこそ何年もいじってない車のポケットには、ゴミや不要なものなんかも入っている。あんたらに見せる前提になっていない。こんなの、いきなり家に入ってきてタンスやクローゼットを開けていくのと同じじゃないか。

十徳が引き金になったかもしれないが、痛くもない腹を探られるこっちの気持ちにもなってくれ。全く、この十徳で誰かを傷つけるとでもいうのか。そんな気がないことは自分たちが良く知っている。茶番でしかない。

もちろん、あんたたちも仕事だ。これを見逃しては、職務怠慢だろう。私達がこの十徳をどう使うかなんて、他人には想像もつかないのである。疑ってかからなくちゃならないことも理解はする。しかし、言い方があるだろ。そもそも最初に声を掛けたきっかけは、「今、目が合ったらパッと逸らしたんで気になりまして」であった。あんたは他人と目が合ったら見つめるんか?「何もないって言ってすぐこんなものが出てきて、びっくりしましたよ」など、いちいち言うことが余計なのだ。あんたたちには怪しく見えたかもしれないが、それ、言う必要あるの?

本署からの連絡を待つ間も、今日は何しに来た、仕事は何してる、職場はどこだ、今日は休みなのか、休日は何曜日か、キャンプは良く行くのか、最後に行ったのはいつなのか、・・・世間話を装った取り調べである。

いい加減私達の怒りの感情も漏れ始め、気まずい雰囲気になっていた。

「ちょっとこっちからかけてきますね。」ひとりが本署にまた電話をする。

結局十徳は「もう車には置かないように」と返され、やっと解放されたのだ。

家に帰って美味しい肉で乾杯しようとしていたところだったのに、とんだケチがついてしまった。

悔しい。時間も無駄になった。屈辱的だ。しかし残された休日の時間を、奴らへの怒りの感情に持って行かれるのもシャクだ。

水に流すのもシャクだったが、どちらがハッピーかと言えば、歴然としている。過ぎたことだ。私達には「ちょっといいお肉」がある。

 

 

彼らには、職質ノルマのようなものがあるらしい。

こんなんでも、まだいい方だったみたいだ。

たまたま持ってたカッターやドライバーでも面倒なことになるので、みなさんもお気を付けて。