治験の広告が入ってきたのだ。「睡眠でお困りの方」。
デエビゴというふざけた名前の薬に落ち着いてはいるが、これで私の睡眠問題が解決したわけではない。マシになった、耐えられる、というだけのことだ。こんなんでも過去最高なので欲をかけないのと、担当医がこれ以上どうする気もないのとで、現状で留まっているだけなのである。
折しも、もうちょっと何とかならないものかと担当医に泣きつこうと思っていたところであった。
しかし、治験。どうにも人体実験的な響きである。
まぁそんなに危険なものを、このように堂々と募集することはないだろう。一応調べてみよう。
薬を開発したら、まずは動物で実験する。
これで安全性が確認出来たら、人間に投与。最初は健康な成人男性。
次は、該当の病気を持つ人を少人数。
これをクリアしたらもっと人数を増やす。
今回の募集はこの最終段階のもので、リスクとしては一番低い段階になる。
とはいえ、治験だ。まだ「験」
験[小学館・大辞泉より解説]
1 証拠によって確かめる。ためす。
証拠によって確かめる。ためす。なのだ。若干と言えど、不安要素を抱えての服薬になる。
なので、見返りがあって然り。
薬代はタダ、交通費などのために少しお金が貰えるかもしれない感じだ。
まぁお金云々はいい。
もしこれで私の睡眠環境が良くなるのなら、という希望。
心は動いた。
具体的なことを知りたい。登録画面まで行き、最後のボタンは保留にすればいい。
私がこの治験に参加できる資格があるのか、質問が並んでいた。
これまでの臨床試験の参加歴、年齢、現在の服薬状況、睡眠状況、かなり細かく問われる。
およそ問題はない。問題のある「睡眠」は、あなたがたの求めるものだ。適任としかいいようがない。
私の気持ちは、大きく「参加」に傾いた。
ところが。
Q18:試験期間中、就床3時間前から飲酒を控えられますか。
また、1日の摂取量を12gより少なくできますか。
目安:ビール・発泡酒300ml、日本酒100ml、ウイスキー約35ml
む。
むむむむむ。
終わった。
次回、担当医に泣きつくことにする。