猫の大五郎が膀胱炎になってから、2ヶ月近くが経った。
一度病院に連れて行ったきりだが、その1回で終わりではないのだ。
しかしなぜ続きがないのかというと、オシッコが採れないからであった。
一応注射と薬でスムーズにオシッコは出るようになったが、原因をつきとめるために、正確にいうと、結石や結晶が出ていないかを確かめるために、「オシッコ採ってくること」の宿題が出ていたのである。
その結果如何では、治療を続ける事になるのだ。
しかし、採れない。
というか、この頃はもう諦めて、「あー、やってるやってる・・・。」と遠目でダイがジョジョジョと音まで出して豪快にしているのを見ている有様であった。
そもそも膀胱炎で、ほとんどオシッコは出なかったのだ。治るまではチャンスがなかった。
しかし、いざチャンスがめぐってきても、予報がある訳ではないのだ。
だいたいがガシーガシーと砂を掘る音で気付くのだが、私は一日中大五郎のオシッコの事ばかりを考えているのではない。
一生懸命晩ご飯の事を考えていたり、一生懸命ゲームのコントローラーを握っていたり、フランス語の勉強をしていたり(嘘)している時に、どれほど砂を掻く音が心に響くだろうか。
ああっ、と思った時にはもう、ジョジョ~♪という「音姫貸してやれや」ぐらいなあられもない音がしているのあった。
なぜそんなに簡単に諦めてしまうのかというと、オシッコを採るには道具が必要であり、それを取りに行くと間に合わないからである。
間に合うような場所に置いているのだが、我が家には現在7つのトイレがあるのだ。
ダイがどこを選ぶのかはランダムであり、良かれと思って置いておいた場所が遠かったりする事も多い。
そんなんでこの頃は、諦めかけていた。
ところがだ。
本日アイロンをかけていると(本日アイロンがけをした事を軽くアピール)、その目の前のトイレでダイがカシカシと砂を掘り始めたのである。
これはチャンスだ!!またとないチャンスである。
私はすっ飛ばないで、道具を取りに行った。過去に、すっ飛んで取りに行ったら、その気迫に驚いて逃げてしまった事があるのだ。
道具(100均で買ったおたま)を片手に、目を合わさないようにして近づいて行く。
ダイは腰を下ろしているが、まだジョジョとは聞こえない。
ここが正念場である。
オシッコを出す前におたまが尻の下に入ると、ダイは逃げてしまう。(少ないチャンスで学んだのだ、クソッ。)
おたまが入っても「あああ、もう止まりませんて。」という状態がベストなのである。
それにしてもトイレまでには、アイロンのコードが腿のあたりの高さでピンと張っている。
くぐるもまたぐも辛い高さだが、私の目線がダイの視覚に入らぬよう、「またぐ」を選んだ。
音を立てず、耳を澄ましながら。
してるのかしてないのか良く分からなかったが、適当な頃合でおたまをダイの尻に潜らせる。
ここまでたどりついて1滴も入っていなかった、という失敗もあった。今回はもっと奥地に潜入する。
それにしても、アホなヤツだ。
誰かに似ている、と表現したいのだが、黒人のひょっとこの口をミッフィーちゃんにした感じとでも言うか。
トボけた顔をしているのである。
そのくせ図体はでかいので、トイレに入りきらない。
どうかすると、後足1本しか入っていない事もある。
全く手ごたえがないのでそっとおたまを出してみたが、果たしてこれが、大成功であった。
成功過ぎて、溢れそうだEE:AE4E6
おたまは小さいので、中の液体は表面張力でこんもり膨らんで見える。
しまった、この先の事を考えていなかった。
何しろ初めての成功なのである。
これをシリンジで吸い上げ、病院からもらってある細長い容器に移さなくてはならない。
どう考えてもクライマックスはシリンジだが、今は目の前のアイロンのコードが深刻だ。
おたまから中身を少しトイレに捨てる事をも考えたが、そこからポタポタ垂れ始める確率と、私がバランスを崩してこぼす確率を、天秤にかけたのだ。
ダンナなら前者を選ぶだろうが、自分ラブじゃ、私は自分を信じる。
ネタ的には一番つまらない展開、つまり何事もなくオシッコは容器に収まった。
私はなみなみとオシッコが入ったおたまを持ってアイロンのコードをまたぎ、片手で袋からシリンジを出し、シリンジでオシッコを吸い上げ、容器に入れたのである。
ただ、量が多すぎて容器から溢れ出した(笑)こんなにいらなかったか。
病院が閉まる12時まで、あと15分であった。
それを逃しても午後4時からまた開くのだが、「採ったど~~~!!」という晴れ晴れした気持ちだったので車をすっ飛ばして提出して来た。
結果を聞く時間がなかったが(笑)