1972年まで終戦に気付かずグアムに潜伏していた横井さんの話と間違えて、グアムで玉砕しなかった横田さんの本を買ってしまったのだ(笑)
結果オーライ、凄く読みごたえがあった。ノンフィクション、真実の重みである。
第2次世界大戦の終戦間際に、満州からサイパン、グアムへと移動した陸軍兵士の横田さん。
詳細はいつも謎だ。
行き先も分からぬまま船に乗せられ、魚雷の攻撃を受けることも。
グアムに移動直後サイパンが陥落、いよいよアメリカはこのグアムへとやってくるのだ。
支援はない。物資もない。見捨てられても彼ら日本兵は、戦わなくてはならない運命にある。
そこで彼に芽生えた生きるということの意味。
投降を決意したのは、決戦と言う名の集団自殺の直前だった・・・。
元新聞記者と言う横田さんの文章は、単なるいち兵士のものながらまるで小説のように生き生きとしている。そこに描かれた日常は、想像していたような厳格な軍隊生活ではなく、食べ物に執着するまるで子供の集団のようで微笑ましい。米軍が迫るまでは、のんびりとした南の島の生活風景であった。それだけに、いよいよ米軍のグアム上陸が近づいて来た時の緊張感が凄まじい。
そもそも横田さんは大学出のインテリで、この戦争や軍隊の規律などにも疑問を持っていたようだ。それが、いよいよ玉砕を目前とした時に「人として生きること」に目覚めさせたのかもしれない。その開花していくさまが素晴らしかった。
海に墜とされた仲間を助けようと、米軍機は戦いの後もそこを離れない。
アメリカ兵の中にある当たり前の生き方を目の当たりにした時、生きていて良かったと思ったのではないだろうか。
日本の過ち。
それを乗り越えた先まで予測できた横井さんだったからこそ、こうして生き残れたのだろう。
囚われながらも、普通の人間に戻っていく日本兵たち。
まるで映画のようなラストシーンが、気持ち良く心に染み渡った。
印象に残った言葉をふたつ。
・正しくない戦争をやめさせるなどということは、不可能だ。もっとも消極的ではあるが、その戦争をサボるということはひとつの反戦行動である。
・人間最後に何が欲しいかと言えば、いかな酒好きでも水を取るのかと感慨を覚えながら(酒を)川に流した。←酒好きである(笑)
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「私は玉砕しなかった」 横田正平
中公文庫