ベトナム戦争時、米軍がベトナムに大量に散布した枯葉剤の影響について書いた本である。
著者が現地に足を運び、何軒も話を聞いて回っている。
古い本だが、小学校の時に先生がこの本の話をしてくれたのを思い出した。
それほど古い話だ。
もうずいぶん、研究も進んでいるのではないだろうか。
ベトナム戦争時、米軍は敵のゲリラ作戦に対抗すべく、枯葉剤を空から散布してジャングルを枯らせていったのだ。
毒性の強いものだったが、当時は撒くほうも撒かれる方も「無害」だと言われていたのだ。
すぐに体調が悪くなったが、戦争中なのだ、戦い続けるしかないし、住民は逃げる術がなかった。
しかしもっと恐ろしいのは、その後である。
枯葉剤を浴びた本人は生活もままならない程の後遺症に苦しみ、生まれてくる子供は奇形か死産、流産が続く。
これはおかしいと調査をしていくと、原因はやはり枯葉剤であり、米軍の上部は有害である事を知っていたことが分かってきたのだ。
被害者はベトナム人ばかりでなく、散布したアメリカ兵の方も深刻であった。
熱に弱くてキッチンにすら入れない、原因不明の皮膚炎、偏頭痛、ガン・・・。
やはり子供は流産・奇形が多く、国の補償も不十分で苦労を強いられていた。
そもそも国は有害である事を知っていて、この作戦を遂行し続けたのである。
兵は捨て駒同然であった。
有害である事が明るみに出始めると、まるで証拠隠滅のように途端に散布量が増えていることも恐ろしい。
原発の事故と重なる部分も多く、科学の進歩も諸刃の剣なのだと思わされた。
戦争もなくなることはないのだろうか。
人間は愚かである。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「母は枯葉剤を浴びた」 中村梧郎
新潮文庫 ¥600