浅田次郎のシェエラザードを読んで感動し、阿波丸の真実を知りたくなったのだ。阿波丸について書かれている本を探したつもりだったんだが・・・。
昭和20年4月。終戦を目前にした日本。門司港で、新聞記者の高須は阿波丸を待っていた。
阿波丸。捕虜のための物資を積み、安導権を持った豪華客船であった。各国同意の上で安全は守られ、役目を終えて日本に帰り着くはずが、アメリカに撃沈されたという。
高須はそれでも門司港で阿波丸を待っていた。そしてそこに、やはり阿波丸を待つ女性がいた。夫が乗船していたという。
結局撃沈された船は帰ってこなかったが、これを機に高須と女性の交流が始まり、阿波丸の真実を明るみにしようという共通の目標が生まれる。
二人は奔走するが、コトは巧みに隠蔽され、なかなか核心に迫ることができなかった。
頼りになるのはもう、たったひとりの生存者の証言だけだ。
しかし彼の証言もまた、納得のいくものではない。
敗戦国となった日本は、ここでもまたアメリカに負けるのか。
まず、ドキュメンタリーだと思っていたので失敗した。
それでも「シェエラザード」のような感動があればいいのだが、高須と女性のラブロマンスがあまりに陳腐で邪魔でしかない。芝居がかったセリフに全く感情移入ができず、どうしてこんな運びになるのかと苛立ちすらあった。
お互いが惹かれていく過程の描写もなく、同居も単なる仲間としてなのか、そもそもそんなに簡単に一緒に住む!?みたいな感じで展開についていかれん。
一方、事実の方は忠実に書き込まれてはいた。が、こちらはまた忠実で、恐らく当時の新聞記事をそのまま正確に、裁判もカタカナで一語一句余すところなく載せられていた。時代の背景が良く分からないこともあり、それがまた、読みにくくさせる。マッカーサーのゼネスト中止声明とか、関係あるの!?
読みにくいと言えば、読点が無駄に多いのも気になった。
まぁ正確な分だけ、歴史的事実には興味深いものはあったかな?風船爆弾とか(笑)
こんな感じだったので、なかなか読み進められなかったのだった。時間ばかりかかってしまった。
ちょっと期待していたのとは違った。それでも一応知りたいことは分かったので、無駄ではなかった。という程度かな。
辛口すみません。正直な感想でございます。
ぽ子のオススメ度 ★☆☆☆☆
「生存者の沈黙」 有馬頼義
光人社NF文庫