人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

生存者の沈黙 / 有馬頼義

浅田次郎のシェエラザードを読んで感動し、阿波丸の真実を知りたくなったのだ。阿波丸について書かれている本を探したつもりだったんだが・・・。

 

昭和20年4月。終戦を目前にした日本。門司港で、新聞記者の高須は阿波丸を待っていた。

阿波丸。捕虜のための物資を積み、安導権を持った豪華客船であった。各国同意の上で安全は守られ、役目を終えて日本に帰り着くはずが、アメリカに撃沈されたという。

高須はそれでも門司港で阿波丸を待っていた。そしてそこに、やはり阿波丸を待つ女性がいた。夫が乗船していたという。

結局撃沈された船は帰ってこなかったが、これを機に高須と女性の交流が始まり、阿波丸の真実を明るみにしようという共通の目標が生まれる。

二人は奔走するが、コトは巧みに隠蔽され、なかなか核心に迫ることができなかった。

頼りになるのはもう、たったひとりの生存者の証言だけだ。

しかし彼の証言もまた、納得のいくものではない。

敗戦国となった日本は、ここでもまたアメリカに負けるのか。

 

まず、ドキュメンタリーだと思っていたので失敗した。

それでも「シェエラザード」のような感動があればいいのだが、高須と女性のラブロマンスがあまりに陳腐で邪魔でしかない。芝居がかったセリフに全く感情移入ができず、どうしてこんな運びになるのかと苛立ちすらあった。

お互いが惹かれていく過程の描写もなく、同居も単なる仲間としてなのか、そもそもそんなに簡単に一緒に住む!?みたいな感じで展開についていかれん。

 

一方、事実の方は忠実に書き込まれてはいた。が、こちらはまた忠実で、恐らく当時の新聞記事をそのまま正確に、裁判もカタカナで一語一句余すところなく載せられていた。時代の背景が良く分からないこともあり、それがまた、読みにくくさせる。マッカーサーのゼネスト中止声明とか、関係あるの!?

読みにくいと言えば、読点が無駄に多いのも気になった。

まぁ正確な分だけ、歴史的事実には興味深いものはあったかな?風船爆弾とか(笑)

 

こんな感じだったので、なかなか読み進められなかったのだった。時間ばかりかかってしまった。

ちょっと期待していたのとは違った。それでも一応知りたいことは分かったので、無駄ではなかった。という程度かな。

辛口すみません。正直な感想でございます。

 

ぽ子のオススメ度 ★☆☆☆☆

「生存者の沈黙」 有馬頼義

光人社NF文庫