ネットジュークが動かなくなってから、何年が経っていただろう。
2007年に発売された、HDD搭載コンポである。
我が家では音源はもっぱらレンタルで当時はMDに録音していたが、ネットジュークの出現によりどんどん本体へと保存は移行していった。
なにしろネットジュークは「朝のおすすめ」「夜のおすすめ」「雨の日のおすすめ」「おそうじタイム」「ダンスフロア」「ソファラウンジ」など、チャンネルを選ぶと適当にそのシーンにあった曲を選曲して流してくれるのだ。
保存してあるのは自分が好きで入れた曲ばかりである。それをランダムに流してくれるこの機能は、私のお気に入りだった。とにかくアホほど借りてきてはジャンジャン保存していったので、自分でも忘れてたり全然聴いていなかったりするアルバムもあったりするのだ。意外性もあって、良かった。
そう、アホほど借りて、ジャンジャン保存した。
やがてまず、MDが使えなくなった。
困ったが、音源の持ち出しに関してはUSBに移してしのいだ。思えばこの頃から、車で音楽を聴かなくなってきたように思う。原因はここだったか。
しかし家で聴く分には変わりなかったので、そのまま使い続けていたのだ。
それもとうとう、電源が入らくなることで終わりを告げた。
修理に出すにはもう遅すぎたようで、サポート期間が終わっているからと受け付けてすら貰えなかった。
中には大量の音源が入ったままだ。このまま諦める訳にはいかない。
ネットで直す方法を調べては諦め、また思い出しては調べることを繰り返しているうちに、またずいぶんと時は流れてしまった。修理の難易度は、さらに上がっていく。
もはやネットジュークは、捨てられない置いてあるだけの物体となっていた。このままでは永遠に、この場所を動くことはない。この本体自身が動くこともないのに。
私はまた何度目かの検索を始めた。
そもそも論外だが、自分で修理するにも簡単には開けることすらできない作りになっているらしい。探すのは、直してくれるところだ。
あぁ何年か前にはまだ数軒はあったような気がする。高いから、踏ん切りがつかなかったのである。
もうそんなことを言ってはいられない。実際に見積もりを出してもらおう。考えるのはそれからだ。
あれこれアプローチを変えて検索していると、ついに見つけることができたのだ。
古いオーディオを直せるショップは何軒かあったが、「ソニーのOBがソニーの古い製品を直したい」という思いで立ち上げた会社だ。ここしかないでしょ、この時のために無駄な時間を過ごしてきたんじゃないか!?
メールを送ると社長自ら電話をかけてきてくれ、話はトントン拍子に進んだ。
MDはそもそもが粗悪品とのことで、修理は不可能。CD、ラジオ、HDDが直って、約3万円だ。
高いかどうかは価値観だろう。あれだけの曲が救われたことを思えば、もう感謝しかない。
今また、テーブルにつくとネットジュークのおすすめチャンネルが流れている。
懐かしい曲ばかりだ。
涙が出るほど、嬉しい。
さて、バックアップどうするか。