人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

お名前を窺えますか?

ファミレスで飲んでいた。

年末年始限定メニューがあったので、飲みながらつまもうぞ、お正月。ということだ。

鍋をつつき、小皿のメニューを追加していく。

ファミレスにありがちな「割りもの薄い問題」は、ボトルを入れることで解決した。

しかしボトル、無敵である。まるで飲み放題のように飲んでしまう。

氷がなくなり追加したが、気が付くとずいぶん待たされていた。

これまでは滞りなく、全てが届いていたのである。どうした?忘れてる?

あまりに遅いので、店員呼び出しボタンを押す。

氷が来ていないことを伝えると、なぜかその若い女性の店員は私達の名前を聞いてきたのだ。

「は??」

「名前??」

「私達の??」

はい、お名前を窺えますか。

訳が分からないまま苗字を伝えると、彼女は消えた。

 

「なに今の??」

「なんで名前聞いた??」

飲み過ぎたからだろうか。何かやらかしてしまったか。考えても考えても、分からない。

「ねぇ、何でか聞いてもいいと思う?メチャクチャ気になるよ。」

「うん、氷持って来た時に聞いてみよう。」

彼女はなかなか現れなかった。名前なんか聞かれた後なので、もうこれ以上刺激はしたくない。

やっとやって来た時には、何も持っていなかった。ますます怖い。このあと店長か警察でも来るのではないか。

「あの、ボトルはいいちこですか、黒霧島ですか?」

ますます私達は混乱した。見ればわかるでしょ、この通り、これ、いいちこ。これによって氷が変わるとでも言うのか?

「いいちこですけど・・・。あのー、さっき名前聞かれましたけど、何でなんですか?気になっちゃって。」酔っていたので遠慮なく斬り込んだ。

「ちょっとどういう事になってるのか分かってないんだけど。」ダンナが続く。

たどたどしく彼女は答えた。

「ええと、ボトルに書いた名前を確認したくて聞いたんですけど、あ・・・。」

あ?

「氷だけでいいんですか?」

「氷だけでいいんですよ。」

私はまだ何がどうなっているのか分からなかった。どうやら彼女は「キープしてあるボトルを氷とセットで」と勘違いしていたらしいのだ。

なるほど、このボトルを持って来てくれた人は違う人だった。そういう勘違いも起こりうるだろう。

 

安心した。

ファミレスで名前を聞かれるなんて、初めてのことである。今から40年ほど前の話だが、シンガポールだったかに旅行に行った時に、言葉に自信がないのでケンタで昼食を済ませようとした時にも、名前を聞かれたことがあった。あれも謎だ。私の英語力がいかんかったのかもしれないが。

 

ボトルは空いた。

なので、もう名前を聞かれることはないはずである。