ファミレスで飲んでいた。
年末年始限定メニューがあったので、飲みながらつまもうぞ、お正月。ということだ。
鍋をつつき、小皿のメニューを追加していく。
ファミレスにありがちな「割りもの薄い問題」は、ボトルを入れることで解決した。
しかしボトル、無敵である。まるで飲み放題のように飲んでしまう。
氷がなくなり追加したが、気が付くとずいぶん待たされていた。
これまでは滞りなく、全てが届いていたのである。どうした?忘れてる?
あまりに遅いので、店員呼び出しボタンを押す。
氷が来ていないことを伝えると、なぜかその若い女性の店員は私達の名前を聞いてきたのだ。
「は??」
「名前??」
「私達の??」
はい、お名前を窺えますか。
訳が分からないまま苗字を伝えると、彼女は消えた。
「なに今の??」
「なんで名前聞いた??」
飲み過ぎたからだろうか。何かやらかしてしまったか。考えても考えても、分からない。
「ねぇ、何でか聞いてもいいと思う?メチャクチャ気になるよ。」
「うん、氷持って来た時に聞いてみよう。」
彼女はなかなか現れなかった。名前なんか聞かれた後なので、もうこれ以上刺激はしたくない。
やっとやって来た時には、何も持っていなかった。ますます怖い。このあと店長か警察でも来るのではないか。
「あの、ボトルはいいちこですか、黒霧島ですか?」
ますます私達は混乱した。見ればわかるでしょ、この通り、これ、いいちこ。これによって氷が変わるとでも言うのか?
「いいちこですけど・・・。あのー、さっき名前聞かれましたけど、何でなんですか?気になっちゃって。」酔っていたので遠慮なく斬り込んだ。
「ちょっとどういう事になってるのか分かってないんだけど。」ダンナが続く。
たどたどしく彼女は答えた。
「ええと、ボトルに書いた名前を確認したくて聞いたんですけど、あ・・・。」
あ?
「氷だけでいいんですか?」
「氷だけでいいんですよ。」
私はまだ何がどうなっているのか分からなかった。どうやら彼女は「キープしてあるボトルを氷とセットで」と勘違いしていたらしいのだ。
なるほど、このボトルを持って来てくれた人は違う人だった。そういう勘違いも起こりうるだろう。
安心した。
ファミレスで名前を聞かれるなんて、初めてのことである。今から40年ほど前の話だが、シンガポールだったかに旅行に行った時に、言葉に自信がないのでケンタで昼食を済ませようとした時にも、名前を聞かれたことがあった。あれも謎だ。私の英語力がいかんかったのかもしれないが。
ボトルは空いた。
なので、もう名前を聞かれることはないはずである。