衝撃の連続であった。そしてこの衝撃が全て事実と言うことが、また衝撃である。
サルと暮らした少女マリーナの話だ。
マリーナ、という名前は後から付いたものである。
少女は幼い頃誘拐され、ジャングルでサルと暮らし、名前を無くす。
それはもう、壮絶な人生であった。
1950年代のコロンビアの治安は極めて悪く、あらゆる犯罪が蔓延っていた。
子供の誘拐も日常茶飯事で、ある日マリーナも庭で遊んでいたところを連れ去られてしまうのである。
ところがその途中で何者かに追われ、マリーナはジャングルに置き去りにされる。
その時の推定年齢は5歳とのことだ。
たった一人でジャングルを生き抜いていくマリーナ。
その孤独と恐怖から救い出してくれたのが、サルのコロニーだったのである。
そしてマリーナも、サルと同化していく。しかしどこかで、人間社会への想いが募っていて、ある日とうとう、サル達と別れを告げる。
ここからがまた、苛酷だ。
相変らずコロンビアの治安は悪く、売春宿、ストリートチルドレン、修道院・・・。マリーナに安住の地はなかった。
結局ジャングルでのサル達との生活が、一番幸せだったのである・・・。
映画のような壮絶な運命に目が離せないが、人間とは何なのか。文明とは。
私達は大切なものを失いつつ、発展してきたのではないかという思いになった。
ストーリーはマリーナが「また」救い出されたところで突然終わっているが、続編を出す予定になっているとのこと。
もう10年経つが、まだ出版されていない。
続きが気になる、どうなってるんだろうか。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「失われた名前」 マリーナ・チャップマン
駒草出版