人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

ある、春の夜。

春も深まり、だいぶ暖かくなってきたことを実感しているが、夜ともなるとまだ寒い日が多い。

昨日なんかも結構冷えたので、寝る前にエアコンを回したのだ。それでも、部屋が温まる前に寝てしまった。

こんな春の寒い夜になると、思い出すことがあるのだ。中学2年生の春のこと。

新学期が始まった。

中学生になってからというもの、私は親と衝突することが多くなっていた。

その日もなぜかは忘れたが、母と激しいケンカをしたのだ。

母は私に「出ていけ」と言う。

父も母も、収拾つかなくなるとすぐに「出ていけ」と言うのだ。私はそれが卑怯に思えて仕方がなかった。

出ていけるはずはないと思っているのである。

困ると分かっていて、言っている。

それが悔しくて、私はそのうち本当に出ていくようになった。

しかしやはり、行くところもなく困ることになる。

結局帰るしかないのだが、それでも「出ていけ」と言ったことを後悔させてやりたかった。心配しやがれ。

軽い気持ちで出ていけなんぞ言えば、私は本当に出ていくんだぞ。

出ていった時間など覚えていないが、結果的に私は外でひと夜を明かした。

長くて寒い夜だった。

行く場所なんて、なかった。

冷たい風をしのぐために、近くの団地の階段で縮こまって過ごした。

本当に、長くて寒い、夜だった。

春だというのに、こんなに夜は寒いんだと思った記憶がある。

こんな夜に、家で、温かい布団で眠れるのはありがたいことなんだ、親に感謝しなくては。

などとは到底思えなかった。

そう思えたのは、40年後の春の夜である。

母は今、冷たい墓の中にいる。