人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

父の生存確認

象の鼻は、長い。

キリンの首も、長い。

父の話も長い!

週に一度、兄と曜日を変えて父に電話をするようにしている。

始めのうちは何を話そうかある程度考えてからかけていたが、もうそんなんいらん。

まぁ一人暮らしで近所に友達がいるような感じでもないのだ、話し相手が欲しいのだろう。

元気で何よりだが、世間話を越えて何かにトピックが固定されてくると、とにかく一方的で長くなる。

まずは今が旬のコロナから話は始まった。

それからペストの話になり、それがペストの小説を書いたカミュの話になる。カミュのペストと言えば、なんだあの、お前知ってるか?ロビンソンクルーソーって話を。主人公がな、色んなところに行ってすげぇ体験をする訳だよ。それを書いたのが、えーっと誰だ、あの、誰だったか、その人がだよ、またペストについて書いててだな。

この調子でもうひとペスト。

そしてお前も本を読め、からの、このあいだ父から借りた本の話。どえれー難解でどえれー長いやつ。

「あれオレもこの間やっと読んだんだけど、ありゃちょっと難しいな(笑)」読んでから勧めてくれよ!

で、その本の話をひとしきり。マグダラのマリアは本当はキリストの女だってんだよ。昔はこんな話題はご法度で・・・。

その御法度を破って出てきた映画が「ダヴィンチ・コード」。

私も観たが、難しくてさっぱり思い出せない。

すると父はそのストーリーを最初から話し出した。

このあたりで気が付いたが、父は話せればいいのだ。私の返事など「ふーん」「へぇ」の繰り返しで全く何の影響もない。「ハァどっこいせっ!」と言っても気が付かないかもしれない。

電話をしながら風呂の掃除をすることにした。

風呂掃除は果たして片手でどこまでできるのか、という挑戦は、なかなか面白いものであった。

ダヴィンチコードの話はどこまでしたのか分からない。

そこから映画に出てきたモナリザの話になって、父がその絵をどこかに引用した話になった。その解説が始まるころには、風呂掃除が終わった。

もう話し始めてから30分になる。片手でやれることも限られ、いい加減そろそろケリをつけたくなってきた。

しかしそれはそれで薄情な気がして、どうすることもできない。ああ。

と、突然思い出したように、「・・・てな訳で、まぁそうだな、今度またみんなで集まった時にでも。じゃあ元気でな!」で電話は終わったのだ。

恐らく湧き出ていた話の種が、とうとう枯渇したのだろう。話しきった、というところか。

次は電話は、兄の日曜日だ。

頑張れ。