「今日、ワニが死ぬ日なんだよね~。」
朝食を食べる前に、娘ぶー子が話し始めた。
私はツイッターをやらないので知らなかったが、「100日後に死ぬワニ」という4コマ漫画が毎日1話ずつツイッターに投稿されていて、話題になっているという。
そのワニが100日後に死ぬことはもう確定しているのだが、そのことをワニは知らない。
ありふれた毎日である。
バイトに行き、ゲームをやり、ラーメンを食べ、恋もする。
一日目、二日目、とワニの日常を私達は俯瞰するのだが、そこに死の影は全くなく、99日目にしても全く普通の一日であった。
翌日の花見を楽しみにして、その日は終わっていた。
ワニくんは、フカフカの雲ふとんが欲しくて注文する。
嬉しそうだ。
しかし人気の布団は一年待ちであった。
その到着が間に合わないことを、ワニくんは知らない。
大好きなワンピースの最終回も、見ることはない。
見たかった映画の公開も、間に合わない。
「いい一年になる」というおみくじを引いて、喜んでいた。
でもワニくんは、死んでしまうのだ。
そのワニの100日目が、昨日だったのである。
満開の桜。
無常だ。
死は平等に訪れるが、その訪れ方は平等ではない。
私達がこうして当たり前のように生きていることも、奇跡なのかもしれない。
ワニくん、さようなら。
あの世に桜は咲いていますか。