家にあった在庫から。娘ぶー子が中学生の時に話題になった本だ。
表題の「西の魔女が死んだ」の後に、短編の「渡りの一日」が入っている。
・「西の魔女が死んだ」
中学校の学校生活に馴染めなかった少女まいは、不登校になっていた。
そんなまいを心配した母親は、一人暮らしをしているまいの祖母のもとへと送り出したのだ。
田舎で、自給自足の暮らし。
自然の中での生活と祖母の暖かい思いやりによって、まいはどんどん自分を取り戻していく。
まるで祖母は魔法使いだ。まいに「魔女としての心得」を説く。
おばあちゃんは、お母さんとは違う。不思議だ。おばあちゃんの言うことは心の中に染み入っていく。まいは素直になれる。そして変わっていく。
有意義で輝きのある毎日を送っていたが、ひとつ、どうしても気に入らないことがあった。向かいに住むゲンジさんだ。
粗野で、欲深く、ずるい大人。
まいはゲンジさんの嫌な部分を何度も見てしまうが、おばあちゃんは「気にするな」の一点張りだ。
どうしておばあちゃんは分かってくれないのだろう。
ついにまいは爆発する。そしておばあちゃんも爆発する。
こうしてまいの心にしこりを残したまま、魔女はこの世を去ってしまうのであった・・・。
この本の対象年齢はやはり中学生ぐらいではないかと思う。
私はこの時のまいの母親ぐらいの年齢で一度読んだが、今回また違う印象で読めたのだ。
思春期のまいのもやもやとした気持ち、不条理を、とてもうまく包み込んで導く祖母の言葉は、迷える大人をも導いてくれる。
ゲンジさんという存在は、誰にも存在しているのだ。
心安らかに生きる方法を、祖母の魔法は教えてくれる。
大切なのは真実ではなく、安らぎなのではないか。
孫が幸せに生きていけるように願う祖母の気持ちに、涙が止まらなかった。
・「渡りの一日」
前作のまいのその後の、とある一日である。
新しくショウコという友達ができ、魔女修行の効果があってかまいは充実した日々を送っていた。
しかしショウコはだらしなく、決めたことを守らない。
今日だって、ショウコの寝坊のせいで予定が流れてしまったのだ。それなのにショウコは悪びれもしない。
そんなショウコにいい加減苛立つまいだが・・・。
その場その場を飄々として生きているショウコは、まいの目にはいい加減に映る。
しかしいうなればケセラセラ、流れに身を任せてみるのも悪くないかも、そんなことに気付かせてくれる話だ。
ちゃんと一番いい道を、人生は用意してくれているのだ。波乱万丈も恐れることはない!
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「西の魔女が死んだ」 梨木香歩
新潮文庫