ケチだ。
ケチでしみったれている。
そしてそのケチでしみったれが、染みついている。
もとからの性格なのか、育った環境か。
高齢出産であった母は、昭和2年生まれ。
戦争を経験し、早くに父親を亡くし、厳しい生活を生き抜いてきた人である。当然、ケチだ。
しかし生まれながらにしてケチ家庭に育った私は、それが基準なのである。ケチをケチとも思わない。
なので、モノはとことん使う。使い回す。
食べ物も然り。
例えば母は、使い切ったマヨネーズの容器を切って、その中に茹で卵を入れて綺麗に使い切るなどしていた。もちろん、食べるものを捨てているところなど、見たことがない。
その代わり冷蔵庫はいつもパンパンで、調理前の食材を痛ませて捨てることは多かったようだが。そんなところまで私はソックリだ。
そんな母のもとで育った私も、生粋のケチである。
食材は腐らせても、残った食べ物を捨てることができない。
綺麗な言い方をすれば、「リメイク」を狙う。
最後の最後まで食べ切るのが理想である。
そこで立ちはだかったのは、「煮汁」。魚の煮汁だ。クサヤの日に作ったヤツ。
これまでは涙を飲んで捨てていたが、何とかならないか調べてみたのだ。
なくはない。
多くはなかったが、一番手軽そうだったのが「煮汁で炊き込みご飯を炊く」というものだったので、やってみることにしたのだ。
しかし問題があった。私はレシピがないと作れないのである。
レシピ自体はあるにはあったのだが、「煮汁」と言っても内容も濃度も違うはずだ。
あんたが作った煮魚と私の作った煮魚と、煮汁の残量も同じだとは思えない。
具材もレシピによって様々。
ええい、ここはもうギャンブルになるが、オリジナルでいってみるEE:AE5B1
米、2合。そこに残っていた煮汁を全部入れてみたが、既定の水の量の半分程度であった。なので、水を足す。
味見して、ちょっと濃い目ぐらい。
ちなみにこの煮汁は、醤油+みりん+酢+バルサミコ酢+砂糖+塩+ニンニク+唐辛子+干し椎茸の戻し汁で、うるめイワシを煮たものだ。もちろんオリジナルなどではない。クックパッドだ。自力ではまともに煮魚すら作れん。
具材は、きんぴらごぼう用のカット野菜(人参・ごぼう)を食べやすく切ったもの、しめじ、鶏もも肉。
これらを最後にドサッと上に載せたら、ちょっと量が多すぎたかEE:AE5B1米の倍以上ありそうだ。
どうしよう、もう入っちゃったし、もういいや、どうせ何やったって失敗するのだ。
そのまま炊けやがれEE:AE4E5
炊けた。
混ぜてみたらゴワゴワに盛り上がっていた野菜もうまく馴染み、見た目は具だくさんの炊き込みという感じになった。
問題は味だ。あぁ、今が絶頂なんだろうな、食べる前。
どれ。ちょっと味見を・・・。
奇跡が起きた。
実は炊き込み、あんまり好きじゃないんだが、すっごい美味しいぞ、これ。
魚のダシが効いてる、煮汁効果。
濃さも配分も適当だ、今回限りのオリジナルである。もう二度と、二度と同じものは作れないという奇跡の炊き込みだ。ああ。
今後残った汁は、どんどん炊き込みにしてやることにした。
これにて残す課題は、「残ったマリネ液・漬物液」ぐらいのものとなった。
ケチ、嬉しい。
そしてこの日のスープは、鍋の残り汁から作ったものである。