転機は合唱団に入って訪れた。
友人が立ち上げた合唱団は、「素人歓迎」と言って誰でも入れてくれたのだ。
私が入った当初は、声楽の下地がある人が素人よりちょっと多いかな?というぐらいの配分であった。
ここでの発声練習で、愕然とした。
高音が全く出ないのである。
本当に、ほとんど出ないといっていい。練習にもならない。
先生は「まぁだんだん出るようになるから。」とあっけらかんとして言ってくれたが、結果的にこれは半分は当たった。
発声が矯正されていくにつれ、少しずつ高音も出るようになってきたのである。
ただし、かすれて汚い。
そして、息が続かない。
私の発声の仕方が悪いのかもしれないが、こればかりは治ってみないと分からない。
いずれにしろ現状では、ひとりだけ全然息が続かずに止まってしまう状態だ。
合唱団も二年目に入り、私はだんだん「歌うこと」の真の楽しさに目覚めていく。
もっと上手くなりたい。
しかし上手い下手以前に、この嗄声のせいで思うように声が出ないのである。
出ない部分は口パクか、場合によっては1オクターブ下で歌わせてもらった。
最近入った新しい合唱団では、テノールパートを歌わせてもらっている。
また、声の大きさをコントロールできない。
声が嗄れているので、たくさん息を送り込まないと音にならないのである。
なのでpp(ピアニッシモ)など弱く歌うところは、カサカサという単なるつぶやきだ(笑)全く芯がない。
ところでバンドの方では、歌で不便はしていない。
嗄れ声は喉をある程度締めることでカバーできるし、合唱の練習のおかげで、喉に負担のない声の出し方ができるようになってきたのである。
具体的に言うと、裏声を出せるようになったので、ミックスボイスを使えるようになったのだ。
ミックスもある程度喉は使うが、かなり楽になったので喉を壊すことはなくなった。
ところが合唱の方は、どうしても解決できない問題が常にあるのである。
出ないものは出ない、嗄れるものは嗄れる、もう自分ではどうにもできないのである。
私はネットで、声帯結節について調べまくった。
結構ポピュラーな病気のようで、情報はたくさんあり、私なりの答えを出すことができた。
声帯結節やポリープの治療は、「音声外来」などの専門の科があるところや声帯の治療に強い病院に行くべきだという。
多くの人が近所の耳鼻科で、漫然と効果のない薬を飲まされていた。
私はさらに、評判がいいとされている病院を調べまくった。
いくつかに絞られ、その中に口コミで「絶対に治してくれる」とあった、都内のX耳鼻咽喉科に行くことに決める。
そして2月の発表会が終わり、いよいよ病院へ向かうのであった。