一体どこから間違えたんだろう??
酷い夜だった。
平日の酒を控え、午前中を無駄なく過ごすように頑張ってきたが、最後の壁は月曜日である。
それでも比較的動くようになったと思っているが、努力をしないと結局もとの木阿弥だ。
前の晩から月曜日に備える。
10時半、遅くとも11時には布団に入る。
それだけのことなのに、それができないのであった・・・。
結局布団に入ったのは、しこたま飲んで12時過ぎだ。
さっきまでやっていたゲームの興奮もあり、なかなか寝付けそうにない。
私は枕元に置きっぱなしの小説を開く。
ところがいつもなら2、3ページも読めば眠くなるのに、全くその気配がない。
夕方に3時間ほど寝てしまったのが響いたか。
酒効果で寝れると踏んでいたのだが。
無理に寝ようとしても眠れないだろう事は予想できたので、私は眠気が来るまでしぶとく本を読み続けた。
無邪気に凧揚げに興じていた12歳の主人公は、夜逃げのトラックの中の運命にまで堕ちていた。
何時間経ったか、やっと手の力が抜けて本を落としそうになり、私は目を閉じた。
例によって電気はつけっぱなしである。その方が良く眠れるのだ。
しかし私はその後、何度も何度も目を覚ます事になった。
気がつけば外では雷が鳴り、雨が窓をバシャバシャと洗っていた。
いつ目が覚めても、その繰り返しである。
「薄気味わりーな・・・。」
私は悪い夢を見ていた。
何度起きても悪い夢だった。
小説の主人公は、大切な友達をひどく傷つけたのだ。
子供である、だれでも身に覚えのあるような種類の事だが、最後には取り返しのつかないような事をする。
読んでる方も、非常に胸が痛んだ。
酷すぎる。
主人公はその後罪の意識に苛まされ、不眠症にまで陥るのだが、まるでその子になったような気持ちである。
胸に重苦しい罪の意識。
実際に私が見た夢は、悪い夢などではなかったのかもしれない。
それでもその胸の重苦しさが、どんな夢を見ても、それを悪夢とすり替えてしまっていたのだろうか。
本のせいで寝苦しい、長い夜だった。
6時半に起きる事はできたが、私はまだ悪い夢の残像と罪の意識に苛まされていた。
朝ご飯だけ出すとすぐに布団に戻ったが、ここからがまた眠れない。
友達を酷く傷つけたせいだ。ラヒム・ハーンはきっとそれを知っている。
懺悔のチャンスはあったのに。
くそー、なんて朝だ。
ピーッ、ピーッという音で気がついた。
ゴミ収集車である。
ということは、8時半ぐらいだろうか。
なんだ、どうやら寝たらしい。
しかし、やはり気が重い。
そうかこれは、月曜の抑鬱である。
早く寝なかったのがいけないのか。
飲み過ぎがいけないのか。
夕方に寝てしまったのがいけないのか。
よせばいいのに、夜中の悪夢を思い出そうとしてしまう。
布団から出たくないのだ。悪夢でもいい、私を布団にとどめるものが必要なのである。
現実の世界に戻りたくない。
あっちに行きたくない。
こんな時の私は、12歳の少年と大差はない。
枕元には、エルが丸くなっていた。
顔を寄せると目を覚まし、朝一番の仕事とでもいうようにせっせせっせと私の顔を舐め始めた。
猫たちの間でなされている「グルーミング」だと私は勝手に解釈しているが、エルが運び込む小さな日常によって、私は少しずつ覚醒するのであった。
リビングに下りると、太陽が雲の間から顔を出した。
何だったんだ、一体。気持ちのいい朝じゃないか。
ここまで頑張れれば後は「気持ちのいい一週間の始まり」なのに、毎週この出だしでつまずいてしまう。
来週の日曜は、夕方寝るのは止めて早く寝る事にする。
一応毎週そう思ってはいるんだけどねEE:AE4E6