ガミガミガミガミガミガミEE:AE4E5
ガ~ミガミガミガミガミガミEE:AE4E5
久しぶりに爆発したぽ子であった。
どんなに大声出したってまくし立てたって逆効果なのは分かっている。
なので、言うべき事がある時にはできるだけ耳を傾けてもらえるような言い方にしようと思ってはいるのだが、一向に効果がない。
なまっちょろい言い方をするから、怒りが伝わらないのだ。
なまっちょろい言い方をするから、心に響かないのだ。
単調な曲にはシンバルを入れよ。
つまらないドラマには波風を立たせよ。
二郎のラーメンにはニンニク入れよだッッEE:AE4E5
ぶー子は音楽室のピアノのイスに片膝立てて、タバコをくゆらせていた。
20歳だ、それに文句は言わないが、まさか立場が逆転する日が来るとは思わなかった。
ガミガミガミガミガミガミEE:AE4E5
ぶー子は「はいはい、よー動く口ですね」ぐらいなスタンスで、シレッとして聞いている。
言い返すでもなく、謝るでもなく、全く響いてはいない、ノーダメージだ。
それが私を余計に苛立たせ、話に終わりがなくなってくる。
ついにはただの繰り返しだ。
私は諦めて、煙たい音楽室を出たのだった。
ダンナは予定通り早く前って来た。
なのでDVDを見ながらご飯を食べる事になるが、そういう気分ではない。
気分ではないが、前回DVDを観たのは2週間以上前である。
この宅配レンタルDVDのコースは、1週間に1本観ないと割高になるのだ、いい加減に観てしまいたかった。
よりによって、晩御飯はキムチ鍋である。
鍋を囲むには、家庭内が平和であると言う暗黙の条件が存在する。
私は腹が立っていたので口も利きたくなかったが、無言で鍋、キムチ。倒置法。
しかしもう、鍋は途中までできているのだ。
まぁDVD観ながらだし、鍋は主役ではない。
ダンナはぶー子にご飯の準備ができた事を告げに行く。
DVDの日は、リビングのテレビに向かってご飯を食べる。
二人用のソファに横一列に並んで、全員がテレビに向かってご飯を食べるのだ。
いつものようにぶー子を挟んで3人並び、私だけが無言のまま、DVDをスタートさせた。
今日のもうひとつの記事にもしたが、観たのはフィリピンのゴミ集積所で生活している人々のドキュメンタリーである。
つまり、リアル。
ゴミ集積所、リアル。
ゴミ、リアルEE:AEB64
しかし私は怒っていなくてはならないのである。
さっきまでムッツリ黙ってよりによってキムチ鍋をつまらなそうに食べていた私なのだ、口を開くにはちょっと勇気がいる。
まぁ誰も何も言わないのだ、これでいいと言う事か。
やがてゴミ集積所は落盤事故を起こし、多くの人がゴミに飲まれてしまった。
助け出さなくてはならない。
掘る・・・、掘る・・・。
出る・・・、出る・・・、
ご遺体がEE:AEB64
ちょっとこれはキツい。
キムチ鍋食べながら無言で観るものではない。
しかし私には「怒る」という使命があるのだ。
この状況を何とかするのは私ではない。
しかしみんな、何も言わないのである。
まるで私達を試すように、ご遺体のほうの傷み方も激しくなってくる。
誰か~~、これちょっと止めませんか~~~EE:AE5C5
やがて鍋の中身がなくなった。
我が家ではこの後にうどんが入る。
「うどん入れる?」
悲惨な状況を目の前に、何たる他人事。
しかしここまできて今さら止めようというのも何か変な気がする。
明らかにここで「うどん」の方が変だったが。
「うんうん、いいね、うどん。」とダンナが普通に言ったので私はちょっとたまげた。
アンタ、この状況目の前にして、うどんいいねですって!?血も涙もないですね。
「ちょっと!!よう食うね!!」
ついにぶー子がまともな発言をした。
「これ観ながら食べるとかキツくね?!」
そうです、私が言いたいのはそういう事です。
さっき私は散々説教をしたが、意外とまともな神経を持っていたので安心した。
DVDを停止して、うどんを食べる。
食べ終わると再生して、最後まで一気に観てしまった。
ガミガミの続きをやろうと2階に上がってみると、ぶー子はもう寝ていた。
タバコの匂いだけが残っている。
子育てに関して安心できる日など、来るのだろうか。
両親を思い出した。