人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

穴が開いていた

やっちまった・・・・・。

一体一年に何度、やっちまうんだろう。

二日酔いである。

激しい渇きで目が覚める。

うう、朝ご飯、朝ご飯を作らないと・・・。

這うようにリビングに下りて行くと、ダンナはこちらに背中を向けて、ひっそりとご飯を食べていた。

おかずは昨日買ってあったしらす干し、それだけである。

しかしもうやる事がないと知ると、私はベッドに戻る。

次は娘ぶー子の巻だが、結局これも同じ事になった。

気がついてリビングに行くと、ひっそりとしらす干しでご飯を食べていた。

どうしてこんな事に・・・。

昨日の事を振り返る。

そうだ、おとといあんまり飲めなくて、その反動か。

あ、あ、あ、そうだ!!

耳たぶを指先でつまんでみると、小さな金属が刺さっていた。

ピアスである。

酔っ払って開けたのだった。

そもそもはぶー子であった。

ニードルという、専用の針を借りてきたのだ。

危険だからちゃんと消毒しろと言うと、彼女は小鍋で湯を沸かし、律儀に煮込んでいた。

私は酔っていたのだ。

なので、度胸試しのような事をしたくなったのだ。

どれ、貸してみなって。

こんなもの、氷などいらぬわ。

採血の注射針より、一回り太いものである。

中は空洞になっていて、細い筒状になっている。

片側が斜めに切られ、尖っている。

その尖った先を耳たぶに当てる。

ちょっと怖い。

目を閉じて力を込めるとそれは、何の抵抗もなくスッと耳たぶに刺さっていった。

柔らかい布に刺繍をしている感覚と、ほとんど変わりはない。

まずい、これは・・・。

合法自傷みたいなもんじゃないか。

これはクセになる。

おしゃれという仮面を被った、自傷行為である。

この危険な誘惑に、ぽ子は抗えるのだろうか。

ぶー子にも止めさせなくては。

しかし一晩経ってみると、罪の意識はなくなっていた。

耳には年齢にそぐわない、メタリックな赤い星のピアスがはまっていた。

もともと開いていた場所の、少し上である。

これは単体では私には若すぎるが、もうひとつふたつ大きなピアスをつければ、いいアクセントになりそうだ。

ニードル・・・ね。

しかし酔わなくてはできそうもないが。