人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子56歳。

引き出しと、しらすみたいなの

よく寝た。

だからぽ子、今日は頑張った。

このサイクルでいくなら、毎晩飲まずに10時半には布団に入らなくてはならない・・・無理だ。

何としてでもゲームをやりたかったから、とっとと洗濯機を回す。

9時に出来上がり、エルを連れて2階にあがる。

わかっている、9時はちっとも早くはない。当社比だ。

洗濯物を干すには、ダンナの聖地・音楽室から行く事になる。

ダンナが片付けて整ってはいるが、物が多すぎるのでエルに変なところにもぐり込まれたらたまらない。

サッサとキャリーバッグに入れる。

ブラインドを開ける。

開けるためにはブラインドのヒモを引かねばならないが、そこまでが近くて遠い。

電子ドラムセットと電子ピアノの間を通っていくのだが、ドラムセットのクラッシュシンバルとハイハットの部分が飛び出していてかなり狭い。

横に細くなってすり抜けるが、抜け切る前に壁にぶら下げてあるベースにぶつかる。

体をくねらせて前に出ると、ドラム用の椅子が待ち構えている。

結構技術がいるのだ。

どこかにぶつかったとして一番ダメージを食うのは、この場合私のベースである。

この部屋の楽器は全てダンナの金で買ったが、この中古のベースだけが私が鼻水たらして稼いだお金で買った宝だ。

1万円という超高級品で、買ってから4ヶ月経つがなんと2回も弾いた。大切なものなのだ。

ブラインドが開くと、まず洗濯物の入ったカゴを持ってベランダに出る。

げぇっ、昨日雨だったじゃん。サンダルが濡れている。

なぜかいつも窓際に置いてあるぞうきんでサンダルを拭いて履く。

ここからが大変だ。

引き出しだらけなのだ。

引っ越した時に、それまで使っていた洋服を入れる収納ケースのサイズが合わず引き出しだけクローゼットに積んであったのだが

やっと新しい収納ケースを買ったのだ。

そしていらなくなった引き出しを、ダンナが全部ベランダに出してしまった。

結構大きいのだ。5つぐらいあったか。

そのせいでベランダはかなり狭くなっている。ここでも干し場までカニ歩きだ。

しかも昨日雨が降った。引き出しに雨水が溜まっている。

ジーパンの裾をまくり、水をゾワーと流し出す。サンダルだったのだ、せっかく拭いたのに濡れてしまう。

そして案の定、裾をまくったまま会社に行ってしまう事になる。

引き出しも、干すたびに何とかしなくちゃと思うのだが、捨てるならプラゴミだ。

入る袋があるのか?と考えるところで毎回終わる。

取り込んだ洗濯物のように、いつかダンナが勝手に何とかしてくれないかと祈っている。

エルの入ったキャリーバッグを物干しにかけると、やっと干しにかかる。

いやー、当分出たくないな、ベランダ。

次は晩ご飯のはなし。

数ヶ月前にダンナのお父さんが泊りに来たが、その時しらす干しのような小魚の佃煮を持って来てくれた。

ところがちょっと量が多く、ご飯のお供どころでは全然減っていかない。

毎朝出していたのでだんだん飽きられてきたのか、この頃ますます減らなくなってきた。

このままではまた捨てる羽目になってしまう。

この量を捨てるとしたら、いったい何匹のしらすみたいなのの命が無駄に奪われ、砂糖と醤油で煮込まれたことになるのだろう?

何て人間って傲慢な生き物なのだろう。・・・違う、何でぽ子はすぐに食べ物をダメにしてしまうのだろう。

いや、まだダメではない、救うなら今だ。

私は料理の本を開いた。

だいたいこんな佃煮を使った料理など載っていないから、じゃこの代用とした。

かきあげだ。「そらまめとじゃこのサクサクかきあげ」だ。うまそうではないか。

ところがまず、ボールに出した段階でこれは代用できなかったのではと思った。

これはじゃこではなく、佃煮だ。ベットンベットンに固まっている。

他の材料と混ざるのだろうか?

混ぜた。

箸で強引にほぐし、タマネギとそらまめと一緒にニッタニッタ混ぜた。

恐らくたくさんの数のしらすみたいなのの首や胴体が千切れたことだろう。ヒトラーもまっつぁおだ。

これに小麦粉を入れたので、ますます硬く重くなる。・・・間違っている。

でももう引き返せないのだ。

不倫でいえば、ついに一夜を共にしたあたりだ。

あまりに重いので水で少しのばした。

そしていよいよ油であげたのだが。

・・・笑(泣)

鍋の中でバラバラになってしまった。

一度別れたふたりは、いくら周りが取り繕ってももう戻れない。やはり不倫は罪である。よせば良かった。

仕方なくバラバラになったそれらを網じゃくし(そんな言葉はあるのか?)ですくい上げる。

何が「サクサク」じゃ。

ベチャベチャだ。

いやらしい不倫のなれの果てじゃ。

それでも皿に盛り付けると、もはや料理ではなく、揚げ物のカスのようであった。

そらまめだけが辛うじて原型を留めている。

味の方だが、佃煮を油で揚げた味であった。

そのまま食えというには辛い味だ。

あのしらすみたいなのの運命を、より悪くしてしまった。

しらすみたいなのが、「無駄死にしなくないです」「何のために生まれてきたのですか?」と言っている。

ぐうたら庶民ぽ子に、国民の運命を委ねられた一国の主の気持ちが少しわかった気がする。

しらすみたいなののかきあげみたいなの↓