2011年3月11日。多くの人が津波に飲まれたが、すみれもまた旅に出たまま戻らなかった。
3年経っても、真奈には折り合いが付けられないまま。
同じ大学に通い、一緒に暮らし、卒業しても時々会っては飲んで近況報告などしていた。友達と言うだけではとても足りない、大切な人。その形なき喪失は、真奈に大きな影を落としていた。
しかし時の流れは残酷だ。
仏壇に手を合わせるすみれの母。菫の遺品を処分すると言い出したすみれの恋人。
真奈だけがその流れに取り残され、憤りを感じていた・・・。
まるでポエムのように美しい文章。もし私が誰かにストーリーを話したとしても、その良さは伝わらないだろう。この作品の良さは、この心地良い言葉の流れにもある。
そんな言葉に乗り、描かれる2つの世界。
ひとつは、現在の真奈だ。すみれを亡くしたまま時が止まり、動けないでいる。
もうひとつの不思議な世界は、謎に満ちている。誰が、どこに向かおうとしているのか。
それが掴めてくるにつれ、私達は「終わり」を予感する。それは、誰にも待っている終わりだ。自分と重ねた時、喪失と悲しみとが重なる。
しかしその世界は、ちゃんと新しい始まりを予感させてくれるのだ。
去る人にも、残される人にも。
詞的でどこかスピリチュアルなストーリーはフワフワと捉えどころがなく、共感がないと楽しめないかもしれない。
喪失、魂、そういったものに向かい合う作品。
私はムチャクチャ感動したけど、誰もが、とはいかないと思われ。
ぽ子のオススメ度 ★★☆☆☆~★★★★★
「やがて海へと届く」 彩瀬まる
講談社文庫
