人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

埋まらない喪失

ゲームが本当に好きで、つい没頭してしまう。

ゲームとして遊んではいるが、その世界観に浸り、現実逃避をする。非現実に没頭する至福である。故にゲームをクリアしてしまうと、喪失感が大きい。あの世界との別れ。

先日「Stray」という、猫が主人公のゲームをクリアしたが、ストーリーが良かったこともあり「ロス」が大きく、しばらく立ち直れないでいた。

別れがたく、条件を満たすと貰えるトロフィーをコンプリートする2周目も、クリアした。

しかし2周目は2周目だ。私はもうストーリーを知っているのである。分かっていることをなぞるだけだ。そこに驚きや感動はない。味の抜けたガムを嚙むようなものであった。トロフィー集めのための遊びだ。遊びとしては楽しんだが、喪失感は埋められなかった。

そこで私は、ゲーム実況を見るようになった。実況者は、初回プレイである。あの驚きや感動を、リアルタイムで体験しているのである。それを見て共感し、あの世界を共有したような気持になる。

そこで私は、もっとそばでその感動を共有する方法を思いついたのだ。ダンナにプレイしてもらうことにした(笑)まぁ短いゲームである。週末に数時間、4、5回もやれば終わるだろう。

 

人類は絶滅し、ロボットだけが残され退廃したサイバーワールド。そこに猫が迷い込む。

感情を持たないはずのロボット達だが、誰もみな猫に優しい。

その退廃した世界から逃げ出そうとするロボット達に助けられ、猫は自分のいたもとの世界へと向かうのだ。

最後には、悲しい別れがある。それはもう、本当に悲しい別れだ。この物語のクライマックスである。そしてこの間の日曜日に、ダンナはそのクライマックスを迎えようとしていたのだ。ダンナはまだそれを知らない。

 

猫はとうとう、誰も来られなかった町の中心部へと入った。

コントロールルームに入り、コンピューターをハックしていく。これが成功すれば・・・・・・。

 

 

 

 

ハッ。

 

気が付いたらテレビ画面は暗く、スタッフロールが流れていた。

「えっ!?何これ、終わり!?」「うん。終わった。」

寝てしまったらしい。ダンナが泣くところを見たかったのに!このために、このシーンのためにプレイして貰ったと言っても過言ではない。

あぁ、もう1回やってと言っても、1回目は1回しかないのだ。それはもう終わってしまった。2回目以降には、1回目の感動がないのである。

 

終わってしまった。そしてまた、どうしようもない喪失感だけが残された。

また実況の世界に戻るしかない。

あれだけは、永遠にいつまでも「1回目」なのである・・・・・・。