ヘロヘロに泥酔していると、もう寝室のベッドにまで行く気力はない。
家の中なら迷わずその場で寝てしまうが、私は酔っていたのだ。しょうもないことを思いついてしまった。
「ミッツぅ・・・。」わざと弱々し気に、声を掛けてから立ち上がり、ヨロヨロと犬部屋に向かって歩いて行く。そしておもむろに、バタッと倒れ込んだ。死んだフリだ(笑)君の忠犬度を見せてくれ。
これまで何度も、一緒に寝ようと思って犬部屋の床で寝たことはあった。
しかし案外つれないもので、朝になるといつもミッツはいつも通り自らケージに入って寝ているのだった。こちらとしては、いつもひとりで寝ているミッツへのサービスのつもりもあったので、とんだサービス返しである。
それならこれでどうだ、ぽ子さんが倒れたのだぞ。ワンワン吠えてダンナを呼びに行ったりはしないか?
ミッツはすぐにこちらに来た。第一段階は合格だ。
そして、ベロンベロンベロンベロンベロンベロンベロンベロンと顔を舐めだしたのである。
う、何となくこれはこれで正解のような気もするが、私はどうしたらいいのか?
舐めやまないので、顔を手でガードした。
ミッツはしばらく顔周りをフガフガしていたが、やがて諦めて、私と背中合わせになって寝たのだった。
救助犬のような展開にはならなかったが、実は私は結構嬉しかったのだ。
たぶん、ミッツなりに尽くしてくれた。
ミッツ、ありがとう。もし私が本当に倒れたら、こんな風に消えてくんだね。ちょっとフランダースの犬みたいじゃないか。
ちなみに、猫はピクリとも動かなかった。茶番に気付いていたんだと思いたい。