終わった後どんな気持ちになっているか。
今は想像ができない。
ライブの朝の言葉だ。
ライブが終わった。想像もしなかった気持ちである。
気は重かった。
出番を待つ間にも、どうしたら楽しめるのか、みんななぜ楽しめるのか、私に何が足りないのか、それとも致命的に向いていないのか、私はずっと考えていた。
「楽しみですか?」と周りの人に聞いてみると、イエス・ノーでほぼ二分した。
よりによって一番最初に弾く曲は、自分でエントリーした山根康広の「Get Along Together」であった。なにをトチ狂ったか、弾き語りをやりたくなってしまったのである。
あれは自信がある人がやるべきもので、全く自分と対極にあるものであった。
楽譜を見た時には弾きたいあまりに「これなら弾ける」と前のめりに判断してしまったが、本番が近づくにつれ、ポジションの重さを思い知ることとなった。
それが今、ジワジワと近づいているのである。
注意点はメモにしておいた。
ところがセッティングに手間取り、スケジュールがずれていく焦りで頭が真っ白になってしまった。
今度こそは楽しんでやる、緊張しない、開き直る、と挑んだつもが、結局いつもの「どうしようどうしようどうしよう」という始まりになってしまった。
結果、70%というところか。
ミストーン数回、何とか止まらずに済んだが、リカバーも上手くいかない場面もあり。
残念な結果だけど、もっと酷いのを覚悟していたので私としては「まぁ良し」という出だしになった。
今回の出演は、9曲だ。
こんな感じに「まぁ良し」繰り返していくうちに、なんとだんだん自信が付いてきたのだ。やれる。
凄く練習したのだ。問題は「弾けるか」どうかではなく、それを「出せるか」だったのだ。自信がつけば、好転していく。
驚いたことに、楽しくなってきた。
そのうち、ムラムラと早く弾きたくまでなってきた。
完成度としては、練習未満であった。
それでも全く気にならない。楽しかった。
終わった時の気持ちは、清々しかった。悔いはない。あるけどない(笑)いい意味での、こんなもんさ。
終わった。
早く重圧から逃れたく、早くこの日が終わればいいと思っていた。
それが叶った清々しさとは違う。
自分の弱さに、勝った、とまでは言えなくても、一矢報いてやれたのかな、ぐらいな気持ちである。
もうひとつ。
飲まなかったぞ(笑)
夜の小手指を、車で家路に向かう。
心地良い疲労感に包まれていた。