精神科医である著者は、ある時から自身も深く鬱屈した状態にずっぽりはまり込んでいて、さながら精神病患者のようであった。
原因は不明。
しかし精神科医ならではの分析力で、自らを解析する。
容姿の悪いことで母親に常に後ろめたさを持ち、それを学力で補おうと頑張って来た学生時代。
医者となり、自立してからも、母親への屈折した思いは消えなかった。
認められたい。
欺いてやりたい。
それは母亡き後も、後を引く。
不安感と不全感と迷い。
物心ついてからずっとそんな感じだが、ここ最近はことさらに酷くなってきた。
一体自分はどうしてこんなことになっているのか。
自分は精神科医だ。精神的な異常がない事は分かっている。
この自分に折り合いをつけてくれるのは、もはや占い師ぐらいしかいないのではないか。
バカバカしいのは百も承知だ。
しかし意を決してそこへ飛び込んでみれば、まさかの号泣・・・。
カウンセラーと占い師には、どこか似たような部分があるという。
占いという非科学的なものを否定せず、まさに「すがる」精神科医の心理が、理論的に描かれていて興味深い。
正確に物事を分析する能力はある。
それなのに、このような精神の迷路に彷徨ってしまうのである。その行く先が占いという、それもどこか合理的なのかもしれないと思わせる面白さがあった。
精神科医が占いに行って起こった事実を面白おかしく書いている本かと思ったのだが、思いがけず哲学的な本で、深い内容であった。
精神科医ならではの分析力に色々と頷けるものがあり、読み応えがあった。
その分、理屈っぽくて読みにくいと感じる人もいるかもしれないが。
ぽ子のオススメ度 ★★★★☆
「鬱屈精神科医、占いにすがる」 春日武彦
太田出版