人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

新宿、アンティノックにて

行く前からそれがどんなステージになるのかは、だいたい想像がついていた。

一度、行きつけの「P」でセッション的に軽く演っているのを見たことがある。

だからこそ、平日にも関わらず、わざわざ行ったのだ。「応援」に。

心配だった・・・・・。

ジャンルはパンクだ。

ベースとギターボーカルの2ピースで、過激で即興的なハードコアだ。

綺麗に言った。

ハッキリ言えば、ムチャクチャだ(笑)

セッションでは、あいつのアレが始まった、という感じで、みんな面白がって見ていた。

それが新宿でライブである。友人としては、心配にもなる。

責任を持って盛り上げなくては、そんな気持ちで赴いたのだ。

果たしてライブは、前にお店で見たもの、そのまんまであった。

彼はギターを弾いていない。闇雲に鳴らしているだけだ。

そしてただ、叫ぶ。

メロディもない。

言葉のシャワー、というか豪雨だ。怒涛のように叫び続ける。

全てが即興の、その場限りの曲だ。

ベーシストがボーカルを見ながら、それに乗せていく。

一見だだ流しのように見える曲にもちゃんと起伏があり、恐らく「サビ」にあたるものがある。

そんなところはベースはスラップになったり、ギターもより一層激しくなったりする。

「スタジオで練習する」というような話を聞いて、あれに練習が必要があるのかと思ったものだが、なるほど、即興とは言え無責任なだだ流しではない。

金髪をグシャグシャに膨らませ目を剥いて叫んでいる彼は、本当はとても腰が低く、純粋で、優しい人である。

そんな彼が、鬱憤を晴らすように、淀みなく叫び続けている。

優しさの分だけ、耐えていたのだろう。

不器用な分だけ、悩んでいたんだろう。

6本の弦を張ったギターにはコードも音階もない、つまり極めて限られた技術で、彼は想いを表現する。

歪んだ不協和音ひとつを、打楽器のようにかき鳴らすだけが、彼の奏法である。

「ラブ&ピースなんかクソくらえ!!」

いかにもパンクらしいセンテンスに、虚勢は見えない。私は本当の心の叫びを感じた。

切なくて、涙が出た。

短いステージだった。それは唐突に終わった。

そしてそのあと私達の前に現れた彼は、「ありがとうございました、ありがとうございました」と言いながらボロボロ泣き出した。

帰り道、ダンナと、「彼の伝えたいことを上手くくみ取って、あの曲をもうちょっと曲らしく仕上げたらどうか」という話をした。

しかしそれがどんなにいい曲になったとしても、彼にそういった仕組まれた「計算」は似合わないね、という結論になった。

あれでいいのだ。

アドリブで勝負の「アードリブズ」。

彼らにしかできないものだ。

これからも頑張って。