一体どうしたというのだ。
あまりにも寝つきが悪いので薬を出してもらうようになって、7年ほど経つ。
軽い安定剤だ。
正直、もはや薬の効果云々で寝ているようには思わない。「飲んだから眠れる」というおまじないだ。
それだけに、断つのが怖い。
こうしてズルズルと月日が経ってしまった。
しかし医者は、相変わらずだ。
これだけのために「担当」もクソもあったもんじゃないが、毎度「調子はどうですか」と聞き、「薬がなくなる前に来てくださいね」と言うだけである。
まぁ面倒なく出してくれりゃいいのだ、文句はないが、何を今さら・・・。
まずは前々回。
珍しくカルテを凝視し、こんな事を聞いて来た。
「前に来たのはずいぶん前だけど、もう薬はなくなってますよね?」
私が薬を飲むのは、寝る前の1回だけだ。
しかしまとめて薬を貰えるよう、1日3回ということにしてたくさん出してもらっていたのである。
だから建前の予定よりも、飲み終わるのは遅い。
・・・などということは、もうとうにお忘れになっている模様である。
そうでしょうね、毎度の無関心。
今となっては何のための薬かも分からなくなっているみたいで、「しんどかったら我慢しないように」などと見当違いなことを言われたりもする。
「眠れないから飲んでいるので、寝る前にしか飲んでいません。」と言うと納得し、またいつものように1日3回で薬を出してもらったのだった。
そして前回。
今度は「この薬は長く飲んでいると耐性ができて来るんだけど、効いてますか?」などという変化球を投げて来た。
一体どうしたというのだ。
あんたのあまりの放置ぶりにその辺は自分で調べ、そのようなことがあることはとうに知っていた。
私は、「効いてるかどうか、というよりも、ないと不安で飲んでるので、おまじないみたいなものです。飲んだ事実が大事なんです。」と答えた。
なぜか、ここはスルーだ。精神科医なら、この辺を何とはすべきではないのだろうか。何とかされても困るが、客観的には。
安定剤をまじないで飲むことには関心を示さず、次にはこう聞いた。「日中眠いとかだるいとかいうことはないですか?」
・・・・・・EE:AEB2F
眠い。
確かに日中、特に午前中は、地獄のように眠い。
しかしそれが薬の副作用なのかどうかなど、私には判断ができない。
ただ眠い、それには間違いない。
副作用か。
どうりで。
チクショー、薬の副作用で毎日あんなに眠かったのか?
私が自堕落だからだという思いだったのだ。不可抗力だとしたら、ちょっと嬉しい。
「はい、眠いです、凄く。」
この点は私も困っていたので、何とかしてくれるならして欲しい。
すると医者はこう言った。
「副作用が出てますね。薬の量を半分に減らしましょう。」
半分に減る=効力も半分に減るということだ。
薬効が半分になるなどと思ったら、「飲んだら寝れる」というまじない力も半分になってしまう。
「あの、その、減ると思うと心配で怖いんですがEE:AE5B1」
飲んでる事実があればいい、などとほざいておきながら、我ながらおかしなことを言っている。
しかしそれどころではない。効き目が減るなんて思ったら、本当に怖くて眠れそうにないのだ。
「でも副作用出てますからね、ちょっと減らしてみましょう。」
ついこの間までこの人は、薬局へ橋渡しをする単なる窓口だったはずだ。なぜ今になって急にそんな医者らしいことを言い出すのだ。
「はい。」と言うしかなかった。
1錠の量が半分になった処方箋を持ち、薬局へトボトボと向かう。
ところが薬局では「いつものですね。」と言って、これまでの量で出してきたのだ。
微笑んだのは、天使か悪魔か。
「・・・すみません、今回量が違うんです・・・。」
正直に答えたのは、こんなんでもこのままではいけないという気持ちが常にどこかにあったからであった。
漫然と薬を飲み続けていれば楽ではあるが、もし「おまじない」が切れたとしたら、もっと強い薬を飲まなくてはならないという恐怖があった。
だから「この薬は効く」と思い込むようにしていたのだ。
強い薬を飲む不安を抱えるなら、飲まなくて済む方法を考えた方がいいんじゃないか。
そんな気持ちとせめぎ合っていたのは、事実である。
次の段階へ入るのだ。ついにその時が来たのだ。
減薬が成功すれば、薬断ちも夢ではない。
それから、2週間ほど経った。薬は効いている。
もしかしたら、薬は本当にまじない程度だったのかもしれない。
しかし日中はやっぱり眠いねEE:AEB64
これも私の思い込みなのだろうか。