人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

リーネに想う・1

 

 

 

 

 

スマホ中毒から足を洗うと言ったはずだが、二日酔い、体調不良、などと言い訳しているうちにまたもとの木阿弥である。寝る前の読書週間が消えた。

 

最近はガールズちゃんねるという女性専用の掲示板的サイトにハマッており、それもまたスリップした原因のひとつであった。

男子禁制という暗黙の了解があるため、中は女子高状態。女の本音のオンパレードが面白い。

たまにオトコが的を外したコメントを入れると、物凄い叩かれる(笑)女子の団結したパワーも気持ちが良かったりする。

 

ある日見ていたトピは、「女性に幻想を抱いている男性に言いたいこと」。

きちんとしたタイトルではあるが、フタをあければ「女は屁をこかないとか思ってるなよ」「毎日ハナクソほじってます」「風呂では・・・・・」もうとてもここでは書けないようなレスのオンパレードである(笑)

ガールズちゃんねるは、レスに大してプラスマイナスをつけることができるのだが、またプラスの多いこと。

そして私も爆笑しながら共感しているので、これらのレスは事実だと言っていいだろう。

男衆よ、女に幻想を抱かない方がいい。

そしてこのトピは見ない方がいい。

 

こういった掲示板では時々あることだが、まったく関係ないレスや筋違いのレスが入ることがある。

私が「リーネ」の一件を知ったのは、そのような意味不明のレスからであった。

恐らくオトコの書き込みだろう。

「お前ら(ガールズちゃんねるの女子を指すのだろう)の嫌いなキモオタが身投げしたぞ、良かったな」という文字の下に、人身事故のニュースと飛び込んだ「リーネ」のツイッターが貼ってあったのだ。

 

ニュースのほうのリンクを開いてみると、新小岩で人身事故。

ツイッターの方はその直前までの、本人の書き込みであった。

 

今どき、電車の人身など珍しいことではない。

それなのに私がつい気にかかってしまったのは、この「リーネ」の人物像と最後の言葉である。

 

「リーネ」というハンドルネームの人物は、アニメかゲームキャラのような女の子のアイコンを使っていたので、最初は女の子かと思ったのだ。

「新小岩到着」。

「次のエクスプレスは40分過ぎかな」

「雪美ちゃんごめん」

「勇気が足りない」

これらの書き込みの後、駅のホームの写真があり、それが最後となっていた。

 

バカッタレが、勇気なんか足りなくて当たり前だ、勇気なんて出さんでいい!!

しかし彼は勇気を出した。その結果がニュースだ。

ニュースにはその場にいた人や、電車に影響が出た人のツイートが貼られているものもあった。

ふざけるな、勘弁してくれ、迷惑。

見ちゃった、ヤバい。

××が・・・になってた。・・・。

 

可愛らしい女の子のアイコンで「勇気がない」と言っていながら、リーネは恐らく誰かに止められることを最後に期待していたんじゃないかという気がする。

新小岩、と言ってホームの写真まで載せているのだ。もしかしたら人生最後の賭けだったんじゃないか。

勇気が足りない。ごめん、とゲームのキャラクターに謝って飛び込んだリーネ。

そしてひとたび事故となれば、ふざけんな、勝手に首でも吊れ、と非難の嵐である。

そしてひとりの人間であった「リーネ」は「見ちゃったヤバイ」という、遺体という尊厳もないただの死体となる。

生きても死んでもリーネに救いがないのが、あまりにも哀れである。

 

生と死の境界線。

電車への投身ほど、その落差の激しいものはないんじゃないだろうか。

まわりにかかる損害、そしてその死に様の壮絶さから、さっきまで死に怯えていたリーネは一瞬にして世間に迷惑をかけた「物体」と化した。

 

私自身も何度も人身事故で足止めを食ったことはある。

専業主婦になって重要な用事などさほどなくなったのでそんなに困ることはないが、やはり「参ったねこりゃ」「次まで何分だろう?」とドライなものだ。

重要な用事がある人からは、もっとシビアな言葉が出ることだろう。

しかし飛び込んだ人にはそれぞれ色んな思いや歴史、当然だが人格だってあるのだ。飛び込んだのは物体ではない。ひとつの人生が終わっている。

 

念のため、私は飛び込みの是非を言いたいのではない。

飛び込むことによって人間が一瞬にして人間でなくなることに、驚きを感じているのである。

私は人間としてのリーネを知りたくなった。

リーネを人間として葬りたくなったのだ。

リーネのツイートを追った。

 

 

長いので明日につづく。

 

e-poko.com