人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子57歳。

最後の猫

4匹いた猫は2匹になり、代わりに犬が1匹増えた。

しかし残る猫は高齢、永遠の命はない、いずれ別れが来るだろう。

先立った先住がうちに来たのは、平成12年。

かれこれ25年間、猫と暮らして来たことになる。

猫のいない人生が考えられない。

 

色んな失敗や学びがあった。

私は最後に、「理想の飼い方」の1匹を、子猫から育てたかった。

完璧に育てる。

人間の赤ちゃんと同じ、3時間授乳。あの苦労を、またしたい。

車と爪切りに慣らせ、何でも食べさせる。歯磨きもする。保険に入る。

やっておくべきだったと悔やまれることである。

最後にもう1回、最後の1匹で最善を尽くすつもりでいた。

しかし私ももう、56歳だ。

猫の寿命は、長ければ20年もザラの時代である。果たして最後まで面倒を見られるのか怪しくなってきたのだ。

いや、それも誰かに託す準備をすることが可能ではある。

自分以上の愛情を注いでもらえる保証はないが、路頭に迷うよりはいい。

しかし私は、もうこれ以上動物は飼わないことに決めたのだ。

 

物価は上がり、世界情勢は不穏だ。

これまでになかったような大変な世の中になる可能性はないのか。

戦争、経済恐慌。

「食うに困る」という状況になったこともなく、そんな日が来るなどと思ったこともなかったが、もしそんなことが起こったら。

お腹を空かせてやせ細る猫を、ただただ見ているしかないのか。

爆撃、空襲。

そんな中で、猫を守れるのか。

責任感の問題ではない。目の前で苦しむ猫を、見たくない。

 

猫のいない生活は、ほとんど恐怖と言っていいほど恐ろしい。

でも結局、最後はみんなひとりだ。ひとりになっていくんだ。それを先延ばしにしようとしていただけだった。

ひとつずつ、手放していく。そんな年齢になった。

ラッキーもミュウも死んだ。母も死んだ。これからもみんな順番に、あるいは突然にいなくなっていくだろう。

私が生きている限り。

 

辛い日も、乗り越えた。

ひとりにだって、きっと慣れる。