どえらい昔、それこそまだ17、8の頃に読んで、感動した本である。
その当時でも古い作品だったのだ。その感動は、平成の45歳にも訪れるのか。
友人の妹・杉子に恋をした野島。
その恋心は日に日に募り、親友である大宮に打ち明けることになる。
大宮は小説家として、野島よりも先に成功を収めていた。
しかしそんな事を鼻にかけず、いつも野島を気遣ってくれる優しい男であった。
杉子の話を聞くにつけても、野島を応援し、励まし、自信を持つように答えてくれた。
ある時、杉子と大宮が出会うことになる。
杉子は大宮に興味を持ったような素振りを見せたが、大宮は野島に気遣い、極めて冷淡に接する。
そんな大宮の男らしさに、自分の小ささを思い知る野島。
しかし、突然大宮がパリに発つと言った時には、正直なところホッとした野島でもあった。
大宮は、野島には偉大過ぎる。
そして、杉子にも偉大過ぎるのである・・・。
いやぁ。
感動したEE:AE5B1
古いからちょっと読みにくかったが。
大宮と野島の友情が美しい。
その中で嫉妬心や猜疑心と戦う野島の心境がうまく描かれており、ただの美談ではないあたりに共感が持てる。
そして後に分かる大宮の葛藤。
成功した人格者で野島よりも大人である印象の大宮が、実は野島と同じように苦しんでいた事実は衝撃だ。
そして大宮が最後に日記にしたためた一言が、野島への真の友情を表している。
恋愛が友情を阻む時。
切なくもどこか清々しい作品であった。
野島の一途な思いも、胸を打つ。
「愛さないではいられない。失うわけにはいかない。断じていかない。神よ、あわれみ給え。二人の上に幸福を与え給え。神よ、私を彼女に逢わせ、かくまでも深く恋させて下さった神よ、彼女を私から奪いはなさりますまいね。それはあまりにも残酷です。」
純愛だ。
ぽ子のオススメ度 ★★★★★
「友情」 武者小路実篤
新潮文庫