人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

友情 / 武者小路実篤

どえらい昔、それこそまだ17、8の頃に読んで、感動した本である。

その当時でも古い作品だったのだ。その感動は、平成の45歳にも訪れるのか。

友人の妹・杉子に恋をした野島。

その恋心は日に日に募り、親友である大宮に打ち明けることになる。

大宮は小説家として、野島よりも先に成功を収めていた。

しかしそんな事を鼻にかけず、いつも野島を気遣ってくれる優しい男であった。

杉子の話を聞くにつけても、野島を応援し、励まし、自信を持つように答えてくれた。

ある時、杉子と大宮が出会うことになる。

杉子は大宮に興味を持ったような素振りを見せたが、大宮は野島に気遣い、極めて冷淡に接する。

そんな大宮の男らしさに、自分の小ささを思い知る野島。

しかし、突然大宮がパリに発つと言った時には、正直なところホッとした野島でもあった。

大宮は、野島には偉大過ぎる。

そして、杉子にも偉大過ぎるのである・・・。

いやぁ。

感動したEE:AE5B1

古いからちょっと読みにくかったが。

大宮と野島の友情が美しい。

その中で嫉妬心や猜疑心と戦う野島の心境がうまく描かれており、ただの美談ではないあたりに共感が持てる。

そして後に分かる大宮の葛藤。

成功した人格者で野島よりも大人である印象の大宮が、実は野島と同じように苦しんでいた事実は衝撃だ。

そして大宮が最後に日記にしたためた一言が、野島への真の友情を表している。

恋愛が友情を阻む時。

切なくもどこか清々しい作品であった。

野島の一途な思いも、胸を打つ。

「愛さないではいられない。失うわけにはいかない。断じていかない。神よ、あわれみ給え。二人の上に幸福を与え給え。神よ、私を彼女に逢わせ、かくまでも深く恋させて下さった神よ、彼女を私から奪いはなさりますまいね。それはあまりにも残酷です。」

純愛だ。

ぽ子のオススメ度 ★★★★★

「友情」 武者小路実篤

新潮文庫