人間のクズ!

敵は自分の中にいる。ちょっとだけ抗ってみたくなった、ぽ子55歳。

修道女アンジェリカ

「・・・で、今度の発表会は、アンジェリカをやろうかと。」

合唱団の指揮者であり、代表でもあるもっきゅんが言った。

アンジェリカとは、1時間ほどで完結するオペラとのことだが、もちろん私はそのオペラを知らない。

「昔あるところにね、・・・。」そしてもっきゅんは、かいつまんでそのストーリーを教えてくれた。

昔、アンジェリカという高貴な女性が庭師と恋に落ち、子供を身ごもった。

その恋も引き裂かれ、子供も奪われ、アンジェリカは修道院送りとなる。物語は修道院での日々から始まる。

ただただ毎日、子供を案じているアンジェリカ。

そんな彼女のもとに、叔母が現れる。

用件は財産を放棄しろということだったが、その時に、子供は病気で死んだことを知る。

悲しみに暮れるアンジェリカは、毒薬を飲んで子供の後を追うのだが・・・、

「で?で??」

「いまわの際に、マリアさまに祈る訳よ。」

「そしたらそしたら??」

「アンジェリカがこと切れるその時、、マリアさまが子供を連れて現れるのよ~~!」

「ええっ!?」

「僕もう、このシーンは泣けて泣けて・・・、マリアさまがね、こうして・・・。」

「ちょっと待って!?マリア落ち!?そんな、何でもアリじゃ・・・。」

「いや、そう言っちゃそうですけどね、でも、ここが感動なんですよ、もう泣けますよっ!!」

ガーン。

庭師に会いに修道院を出る訳ではない。

復讐を企てる訳でもない。

物語と言うにはあまりにも起伏がなさ過ぎる。

しかも「泣ける」って・・・。

もっきゅんが純粋なのか、私が汚れきってしまったのか、私は呆気にとられて彼を見るしかできなかった。

そして今、私はCDを繰り返し聴いて曲を覚えている。

時間さえあれば流すようにしてるうちに、少しずつ曲も覚えてきた。

しかしイタリア語のオペラである。言葉が分からない分、想像力を働かせて聴かざるを得ない。

かのアンジェリカが倒れる場面は、「ヨヨヨヨヨ」と叫ぶので分かる。

後ろからは、天使の合唱が聞こえている。

可哀想なアンジェリカ。

しかし、死んでやっと子供に会えるのだ・・・。

涙なしで歌えるだろうか。

これが私の今の心境である。