今週のお題「名作」
映画、小説、音楽、絵画、・・・いいと思うものは数あれど、「名作」となると考えてしまう。
ただ「いい」のではない。「名作」だ。それは不動であり、時や気持ちの変化に流されてしまうものであってはいけない。そう思って考えると、案外名作なんてそうそうあるものではないんだな、と気付かされる。
しかし「不動」のものだ。それは常に、私の名作として存在しているのである。忘れてしまうようなものではかった。
自信を持って私が「名作」と言いたいのは、ベートーベンの第九の合唱、第4楽章だ。
こんな風に言うといかにもクラシックに詳しく、その中から厳選したみたいに聞こえてしまうかもしれない。これは単に、毎年年末に聴いていたところからである。
有名な曲なので、もともと馴染みはあった。
そこへ毎年、大晦日の興奮と酒の酔いで舞い上がっている時に、オーケストラで聴くのだ。酔いで感動は何倍にも膨れ上がり、しまいに私は立ち上がって指揮棒を振る(笑)とうとう感極まって涙がチョチョ切れるほどだ。
こうして第九は「すごいもの」として毎年刷り込まれる。年々それは、強固になるのであった。
クラシックというのはロックやポップスと違い、AメロBメロサビの繰り返しのような単純な構成ではない。
主題を変化させ、戻り、進み、鎮め、盛り上がり、の、壮大な長い1曲なのである。ドラマだ。
特に第九には歌が入る。力強いソロパート、押し寄せる合唱。
それは波のようなうねりになって、押し寄せては引く。そして怒涛のラスト。壮大なエンディング。
誰もが立ち上がって笑顔になっているだろう。少なくとも心の中では。「歓喜の歌」というにふさわしい。
そう、喜びだ。
正直なところ、歌詞なんて良くわからない。
それでもそこには、生まれてきたこと、今ここに存在すること、この世界に、生きることに、喜びを感じさせるものがあるのである。
沸き上がるような喜び。
魂を揺さぶるとは、このことか。
実はここ数年は、友人たちと大晦日を過ごしているので、聴いていない。
次の感動は、凄いことになりそうだ。
私の、そして世界の名作。